英霊たちの応援歌/最後の早慶戦
3.0点
『ラストゲーム 最後の早慶戦』という映画もあるのね。 2005年に新しい発見があったから、この映画は古いのだろう。 作るのが早計だった、なんちって。 早慶の関係者がいないから、あんまり興味はなかった。 もっと野球が描かれているのかと思ったら、ほとんどが戦争だった。 別に「最後の早慶戦」を謳わなくてもよかったのではと思うが、早慶の卒業生がいっぱいいるから観客数を狙ったのかもしれない。 戦争映画のよくないところは、平和を愛しているのに、映画で日本人が負けるとどうしても「鬼畜米英」的な気持ちになってしまって、日本人なら穏やかには観られないことだ。 「『風立ちぬ』パラドックス」とでも名付けようか? 平和を願っているといいながら、飛行機が好きで、戦闘機が好きで、訳のわからない、どっちつかずの映画を作ってしまうことだ。 しかも、ビールを飲んだり、ナポレオンを飲んだり、女を追いかけたり、結構楽しそうなのである。大谷直子が恋人にいたら、軍隊もいいな、とお馬鹿になってしまう。戦争中だけど、野球をしている。だって、『瀬戸内少年野球団』ほかの映画を観ていると野球こそが戦後民主主義だと思うのだが、これが悲惨な最後への伏線なのだろう。 「反返り爆撃法」というのが出てきて、これが特攻隊になっていくのだ。 実際に成功したのは最初だけで、アメリカはオペレーションズ・リサーチを生み出し、防御の仕方を学んでいく。 養成するのに時間も金もかかるパイロットをむざむざと死なせていては勝てるはずもない。飛行機だって、安くはない。 だが、それが通ってしまうのが、日本だ。 古い日本だけでなく、石原慎太郎の号令で誰も好まなかったオリンピックを招致し、みんな反対していた豊洲移転を遂行した。 しかも、誰が責任者かわからないままで終わっている。 役人のお手「盛土」があまりにもひどい。 これまで勇ましいことばかり言っていた慎太郎を信じた人々が馬鹿だったとばかり言えない。 一度決まったことを柔軟にできない役人体質はどうしようもない。 東京大空襲の場面も出て来るが、焼夷弾を消せ、ということで逃げる人を留めて焼死させた「戦犯」もいっぱいいたはずだ。 結局、最後の自己犠牲になってしまう。 この特攻精神は『鉄腕アトム』も『宇宙戦艦ヤマト』も『永遠の0』も変わらない。 人間が引き起こした戦争だって、自然災害の一つに思われて、無常観の中に消えていく。そして忘れ去られる。 親戚に自衛隊に入った子がいるが、「免許も取れていいね」と話したら、そうやって釣っているだけで、「曹」がつかないと免許は取れないのだという。その「曹」まで3年以内ということだった。この映画でも分かったことは少尉候補生以上でないと特攻に入れなかったことだ。 『肉弾』の岡本喜八映画に思えない。 どうしたら、こんな散漫なストーリーになってしまうのか? 笑いがないし、ひねりもない。オチもなくて、落ちるのは飛行機だけ。 最後のギャグっぽいのが大いなる皮肉かと思ってしまう。 そうだった、慎太郎は齢(よわい)がどうこう話していて事情聴取を拒んだが、賊軍の西郷隆盛も靖国神社に入れるべきだと嘆願に行ったそうだ。そのうち、田中角栄も入れよというかもしれない。 「おもてなし」は「裏があり」ということだろう。