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英霊たちの応援歌/最後の早慶戦

bakeneko

5.0

ネタバレ特攻隊はみんな少尉だったんだ!

1943年(昭和18年)10月16日に、早稲田大学の戸塚球場で行われた「最後の早慶戦」に参加した学生達を中心とした“学徒出陣兵”の散華していく青春を、実際の学徒動員兵であった岡本喜八監督が瑞々しく活写した“戦時下青春物語”の傑作で、戦争という巨大な災難に飲み込まれながら若さを煌めかせて散る若者の心情を見事に浮かび上がらせています。 え~、最近は“戦争を知らない世代が勝手に夢想した特攻隊”が映画化されて、“今の日本人が感動したい戦争幻想”が作り出されていますが、本作では監督をはじめとして戦争経験者の真実が“本物の戦争”を抉り出して見せてくれます。 実際の学徒動員兵であった作者&監督の実体験が凄まじいリアリティを出している作品で、最初は学徒動員が自由意志による出願制度であったことや、当初は爆撃機を生還させていたのだが、戦況が悪化して制空権が無い状態によって、特攻へ物理的に帰結した(=水平雷撃の場合、落爆した攻撃機は必然的に爆発に巻き込まれるので、どうせ助からないならば最初から自爆を狙う方が効率がよい)など、 “最初から学生の特攻ありき”ではなくて、徐々に時局がエスカレートしていったことが分かります。 そして、当時の若者も軍国洗脳されていたのではなくて、現在と全く同じ多感な青年であったことを示して、“取り上げられていく青春への諦めと渇望の交錯する想い“も共体験させてくれます。 “死ぬのは覚悟したけれど、どうも何のためなのか今ひとつしっくり来ないんだ!”―という“青春廃棄の意義の模索”と、“銀座の店の地図を記憶に基づいて再構築する”―最後の日々まで些細な思い出や遊びに拘る“生命の迸り”を瑞々しく描いて、死を間近に感じる感触を“戦争を知らない世代”に体験させてくれる作品で、現在の勇ましい再軍備論者こそが“平和ボケ”であることを痛感させてくれます。 海の特攻青春をミニマムレベルで描いた「肉弾」の姉妹編とも言える―空の特攻青春群像を記録実写映像まで駆使してスペクタクル満載で見せる作品で、肉弾と同様に佐藤勝のボレロ調のトランペットが耳に残る傑作であります。 ねたばれ? 早慶戦の野球場面をバサッリ切る辺りが、機知に富んだ喜八流!(より野球に焦点を当てたお話を見たい方は「ラストゲーム 最後の早慶戦」2008年、を観ましょう!) おまけ―レビュー項目のない岡本喜八監督のTV作品のレビューを… 「ナバロンの要塞」+「コンバット」! 「遊撃隊」(東宝、宝塚映画1966年10月12日~1967年1月5日:日本テレビ系:全13話(52分X13)(DVDはキングレコードから発売) 岡本喜八監修、監督竹林進&山本迪夫、出演:佐藤允 、小坂一也、堺左千夫、大木正司、小川安三 、寺田誠、三橋達也+ゲスト出演者(=喜八組の面々) 昭和19年の中国戦線、B29の本土爆撃を阻止すべく桂林飛行場爆破に向かう遊撃隊の道中での戦闘を活写した一話読み切りのTVシリーズで、「独立愚連隊」のTV版を狙った作品ですが、それぞれがプロフェッショナルの7人からなる小部隊の敵地潜入ゲリラ戦闘という面では「どぶねずみ作戦」に近い作品となっています。 当時大人気だった「コンバット」の一話読み切り&ゲスト形式と、「ナバロンの要塞」の爆破サスペンスの他にも「女狙撃兵 マリュートカ」等のソ連映画も取り入れた脚本は、戦闘の中にヒューマニズムを開花させていて、戦争の愚かしさと平和への願いを根底に感じさせます。 最終話の決着まで一気に見せる戦争夜話で、火薬やスモークを使って映画レベルの迫力と出来映えとなっていますよ! ねたばれ? 第三話“日の丸婆さん”には、主演の佐藤允さんの長男(1歳)との親子共演も観ることが出来ます。

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