天使を誘惑
作品レビュー(1件)
- tam********
4.0点
「イヤァ~、さすが敏八さん、やりますね!」 「ホリプロさん、さぞや気が気ではなったでしょうね?」 天下のホリプロ、ぐっと我慢してこんなふうに百恵を使わせたのは偉い。 どちらも大人でした。 この友和・百恵の作品は、ゴールデン・コンビ・シリーズといわれて久しい。 最近ではお約束のシリーズとして定着してきた。 シリーズの強みは、当たり前だが「ふたりの映画」ということだった。 今回、敏八さんがコンビを取り払ってしまった。 結論を言えば、敏八シネマでは友和が残り、百恵の場所がなくなっていた。 彼女だけがスクリーンで平坦に、ぎこちなく、溶け込めずにいた。 俳優としての存在感すらなかった。 すべては、二人が実生活で恋愛宣言をした時点から決められた宿命のようなものだったのだろうか? 実はそんなことは全然気にもならないのだ。 友和・百恵の名を借りた敏八シネマ、それも上出来の部類だった。 ストーリーは、同棲している男女の成長を丁寧にきめ細かく描いていく。 最初はお茶の間テレビドラマもかくや・・・というほど、百恵のぎこちなさが目に余ったが、津川雅彦がこれを一気に救った。 友人(火野正平)の結婚パーティ大乱闘にしても、ありきたりの状況をあれほど生々しく見せたのは津川の力だった。 一転して後半の人間模様は多彩で強烈。 恋人の心の影にいた父(大友柳太郎好演)の自由な人生を知り、動揺する百恵。 幼いときからの不幸に負けず、並外れた意思を持つ百恵にも生じた隙間のような弱さに気がつく友和。 たくさんの不幸、不誠実のなかで愛する人を見つけ、また愛に応える。さまざまなエピソードが二人の周りでうごめき決着する。 ラスト近く、ふたりが語るシーン。 過去がオーバーラップでインサートされる、カメラはずっと会話する二人を捉えていく。 話のやり取りで、少しずつ動くカメラ。最後百恵のアップ画面でストップするまでの緊張感が印象深い。 ということで、残念ながら楽しくも幾分白々しい男女の愛を年に2度発表してきた、本シリーズも大きく変わってしまった。 ぼくには意図的な発展的解消のように思えている、どうだろう? 記:1980年2月5日
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