手塚ファンとしては複雑な気持ち。
- pin***** さん
- 2013年4月17日 20時43分
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ありていに言って、手塚アニメは、実験作品にはかなりすぐれたものがあるのですが、長編アニメには稚拙なものが多いようです。
長編作品で成功しているのは、初期の『ある街角の物語』や『展覧会の絵』、そして手塚治虫がかかわっていない『哀しみのベラドンナ』くらいではないでしょう。
有名な『千夜一夜物語』や『クレオパトラ』も、首をかしげざるを得ないところが多々あり、本作はどちらかというとその系列の作品だったように思えます。
悪い意味での手塚治虫のマンガ家としての資質が前面に出てしまっているように思えるのです。
個々のアイデアやギャグはとても面白いと思います。
ところが、それが一つの作品としてバランスをたもてず、崩壊寸前になってしまっているのです。
フランケンシュタインの怪物が、優れた部分をつなぎ合わせながらも、全体としてはどこかちぐはぐなモンスターとなってしまったように、優れた部分を持ちながら全体として異形のアニメーションになってしまったように思えてならないのです。
ただ、中心に手塚治虫が執拗に描いてきた、ピノキオ的人形愛が据えられているがために、かろうじての統一感を持ち、あるいは感動をもよんでいるのではないでしょうか。
アニメーションとしても、全体の統一感に欠けています。
主人公ゴドーの訓練のシーンなどはかなり面白いですし、宇宙センターへの長い道のりも、CGのなかった時代、手書きであれだけのものを書いたのは驚嘆に値します。
しかし、明らかに音声とのずれがあったり、ミュージカル場面のトーンが雰囲気に合わなかったりと、全体の雰囲気をぶち壊してしまっている場面が多々あるのです。
三匹の宇宙人も作品のアクセントとなっておらず、火の鳥の犠牲となったり、突然よみがえったりと物語の不自然さを出しているばかりです。
こういうものの使い方は、ハリウッドにはかないませんね。
後年、CG版『鉄腕アトム』の中に、ロボットのデコボコ・トリオが登場しましたが、こちらの方が手すかカラーを見事に表現していました。
手塚ャラクターはディズニーの影響を強く受けているのに、なぜかアニメーションには合わないのが不思議です。
物語中盤に登場するヒゲ親父の作画も、全体のトーンとあっていません。
また、ヒゲ親父の惑星の火の鳥のエピソードなどは、手塚治虫のお得意とするギャグで、ここだけ見ると面白いのですが、これまた、全体のトーンとあっていません。
変にフルアニメにしたためにグニャグニャとした無駄な動きが出てしまうのも手塚アニメの悪いところでしょう。
主人公の宇宙パイロットの教官にあたるボルカン大尉の動きなどその最たるものです。
一方、三匹の宇宙人の動きに工夫がなく、音楽にもあっていない、つまらぬリミテッドアニメなのも興ざめなのです。
どうでもいいことですけど、声優の起用もどこかちぐはぐ、特に、ヒロイン・オルガと宇宙人ピンチョは絶対違うと思っています。
しかしながら、良くも悪くも手塚アニメの特徴を知るには良い作品なのかもしれません。
(文字制限を超えちゃいました。続きは人物レビュー・手塚治虫で)
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