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五番町夕霧楼

gam********

5.0

ネタバレ彼は権力の象徴、威容を誇る本堂を焼く

豪壮な美しい寺が天を焦がして燃え盛る。 顔を緋に染め、血笑のごときゆがんだ表情で 自らの身を捨てる若き修行僧。 松坂慶子が、その線の細さで儚い郭の女を演じる。 その綺麗さといったら・・・。 奥田瑛二が、貧しさから郭に売られた幼馴染の松坂を想う修行僧。 ふたりは大人になり、女郎と客として二人だけの空間で逢うのだが 手も触れないのである。 初めのうちは再会を喜び、お互い頑張ろうと励ましあっていたが やがて女には身請けの話があがり 一方、男は僧侶の世界にも、上下や派閥、裏と表があるという 腐った現実にいたく幻滅し さらに彼女が労咳で命が助からないと知るに至り 望みの全てを失ってしまい、自我の崩壊が始まる。 彼がその心の奈落から引きずり出した結論。 彼のなすべきこととは。 威容を誇る本堂を焼くこと。 二人は初めて激しく愛を交わしたのち それぞれの方法でこの世との決別を遂げる。 仏像に自分の体を縛り付けて炎に呑まれる若き僧の姿は 壮烈な覚悟を感じる最期だった。 1980年5月5日 月曜日に観て 以来、初めて語るレビューですが、強烈な印象は変わっていない。 三島由紀夫の「金閣寺」と、話は同じ金閣炎上の事件から来ている。 映画は胸のふさがるような物語でありながら すばらしい演技に見入ってしまった佳作だった。

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