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ミスター・ミセス・ミス・ロンリー

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5.0

孤独な男女の神話

1980年。神代辰巳監督。電柱に縛られている女を通りかかった男が助けると、女はそのまま男の部屋に居ついてしまう。女は今までもそうやって一定期間男の元で過ごし、別れると電柱に戻るという暮らしをする孤独な女であるらしい。ところが、男の方も捨て子で戸籍がなく、キャバクラを経営しながら危ない仕事を続ける孤独な男だった。共感しつつ反発する二人。そこへ、企業倒産に絡んで大金を強奪した出版社勤務のインテリ中年が関係してきて、奇妙な三角関係が生まれる、という話。ほかに出てくる人も決まって孤独で優しい男たちばかり。 筋が複雑で見えにくいという以上に、人間関係が細やかに描かれいるがゆえの複雑さがある豊かな作品。場面の中心を常に外側に向かってずらしていこうという音楽と映像が重なっている。映画を撮るものの自己意識も存分に含まれており(小説を模倣する主人公の設定とか、外国人のまなざしショットとか)、物語の中心などなったく気にせずに映画は進む。この複雑さがすばらしい。少々甘ったるいのは当時22歳という主演の原田美枝子が原案を書いたせいか。脚本にするにあたって神代監督とどのようなコラボレーションがあったのか興味深いところ。この複雑さの由来は研究されているのだろうか。 物語も描写も決して現実の生活を反映してはいないが、奇妙なリアリティがある。神話的な出来栄え。

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