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冒険者カミカゼ (1981)

監督
鷹森立一
  • みたいムービー 4
  • みたログ 39

3.07 / 評価:14件

日本版「冒険者たち」

 仏映画の「冒険者たち」なら御存知の映画ファンは多いだろう。若いアラン=ドロン氏と渋いリノ=ヴァンチュラ氏・しっかり者のようでか弱いジョアンナ=シムカス氏の奇妙な3人組が一攫千金の夢を抱いて赤道直下の大西洋へ宝物探しの冒険に出かける。口笛とピアノが効いたシンプルなBGMは有名だ。(余談1)

 そのリメイクというかパロディが邦画にある。公開は1981年。リノ=ヴァンチュラ氏に相当する役を中年の魅力が出始めた千葉真一氏が、アラン=ドロン氏に相当する役に未だ子どもっぽさが残っている真田広之氏、ジョアンナ=シムカス氏のポジションには少女のような秋吉久実子氏が担当した。

 物語の展開は、一攫千金を成し遂げるがギャングに横やりを入れられ、ヒロインが流れ弾にあたって倒れ、残った2人は寂莫感に包まれる、という本家の流れを基本軸に、些か伏線を多く入れてドタバタ喜劇の要素も加味され、初めて観たときは安っぽくてバカバカしいパロディにしかみえなかった。
 本家の「冒険者たち」は青春の残滓の輝きというべき切なさがあり、それが作品の雰囲気を渋くしているのだが、この映画はその良さが吹き飛ばされている。

 まず、本家の設定はシンプルかつナチュラルだが、この作品は面白くしようと気負っているのか強引すぎて構成に無理がある。物語前半は、大学汚職事件に巻き込まれて解雇された職員(千葉真一氏)のグループと、同じ事件で除籍された学生(真田広之氏)のグループで不正金強奪競争を行う。些か登場人物が多いので、バタバタし過ぎている。
 千葉真一氏のグループが強奪に成功するが、ヤクザに嗅ぎ付けられアジトを襲撃されて恋人(あべ静江氏)が殺される。そこへ真田広之氏とヒロイン秋吉久実子氏が駆けつけ千葉真一氏を助け出し、やっと「冒険者たち」トリオが結成されるのだが、知り合って意気投合するまでの展開が速すぎる。
 また、千葉真一氏も真田広之氏も秋吉久実子氏もキャラクターを大袈裟に演じているので、喜劇にしか見れない。観終った後、口から思わず出た言葉が「なんじゃこりゃ」だった。

 ただ、今みればもっと印象は変わっているだろう。千葉真一氏扮するキャラの設定は伝説の元オリンピック体操選手となっている。真田広之氏は大学の体操部の学生役で伝説のオリンピック選手を尊敬している設定だ。これはそのまま実生活の千葉・真田コンビにダブる。当時の千葉氏は真田氏をスターにしようと育てていた時期だった。大仰でワザとらしい演技も気合の入れ過ぎなのか?
 秋吉久実子氏がとても若い。独特のけだるさと湛えたフリーターの女の子といった風情で千葉氏と真田氏の男臭さを和らげている。

 ラストにヤクザとの最後の一戦を繰り広げるが、ロケは島全体が廃墟の有名な長崎県の軍艦島で行われている。炭鉱の町として栄え、小さな島に大きな団地が建ち並んだ要塞のような所だが、74年に閉山となってから無人の廃墟となっている。映画の風景はまだ比較的建物は傷んでいない状態だ。現在では木造家屋は朽ち果てて消滅し、鉄筋コンクリートの団地も風化がすすみ、以前のように立ち入る事ができなくなっているので、貴重な映像だろう。

(余談1)左翼思想に傾倒している友人は、この映画をボロンチョンに酷評している。「冒険とは、世界初の南極点到達に成功したアムンゼンや、チョモランマ(エベレスト)初登頂に挑戦したマロリーや、戦場を取材中に倒れたキャパの行動こそ該当する。映画の3人は実社会から落伍して逃避しているただの低俗な山師やないか」と厳しい。
 さらに「財宝の所有権はヒロインの遺族にあるだと?! ふざけるな! あれはコンゴ人民から搾取した物や! もともとはコンゴ人民の財産だ! コンゴ人民に返却するのが人の道だ! けしからん!」と怒り出し、「所詮は、アフリカを食い物にしてきた薄汚い侵略者どもの映画だ」と締めくくった。

 友人の理屈は解るが、世の中が友人のめがねに合う映画ばかりにしたら、きっと旧ソ連や毛沢東時代の中国の映画みたいになるのは目に見えている。
 主人公達のキャラを考えたら、財宝をコンゴ人民に返す発想は起こり得ないし、万民は崇高かつ偉大な人よりも、自分と等身大のキャラが他愛ない夢を実行する様に安らぎを求める事も多々ある。それを否定する感覚は辟易する。清濁玉石混合でええやないか。硬直した感覚では映画は楽しめない。

詳細評価

物語
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