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さらば愛しき大地 (1982)

監督
柳町光男
  • みたいムービー 26
  • みたログ 81

3.49 / 評価:35件

「愛しき大地」は何処に?

  • まんだよつお さん
  • 2020年12月30日 13時57分
  • 閲覧数 96
  • 役立ち度 0
    • 総合評価
    • ★★★★★

柳町光男監督の脚本に惚れ込んで出演を快諾したという秋吉久美子がいい、素晴らしい。

父親を知らずに育ち、母親の営むスナックを手伝う順子(秋吉久美子)は、強くたくましい男に憧れ、その理想の姿をダンプカー運転手の幸雄(根津甚八)に重ね合わせる。もちろん観客の誰もが思うように、二人の生活が幸せなものに結実することはない。妻子を捨てた根津と暮らし始めるものの、シャブ中地獄に堕ちていく根津。冷蔵庫を借金のかたに取り上げられ、ごみに汚れた床をぞうきんで掃除するシーン。あるいは悲しみ、恥ずかしさ、自己嫌悪といったもろもろの感情を裡にひそめたふてくされ顔で唄う中島みゆき……。秋吉久美子がいい、素晴らしい。

実際に注射針を自分の腕の血管に刺すなど、これまた迫真の演技で覚せい剤中毒者を演じきった根津甚八。子どもをつくることくらいしか生産性のない男の、鬱屈し、酒浸りで、寂しさを暴力にまぎらわす熱演も、しかし秋吉久美子の存在には遠く及ばない。

拾い物と言ってしまえば申し訳ないが、脇を支える役者さんたちがいい味を出している。

根津の弟を演じる矢吹二朗。兄嫁となった幼なじみの秋吉への思いを捨てきれない複雑な心境で、根津と秋吉に接していく。秋吉へ尽くす半面、不誠実な根津を憎み切れない。根津の正妻、山口美也子。秋吉と同棲する根津をクズ男とあきらめ、舅夫婦と同居し農作業に精を出す。そんな生活に疲れた彼女が弾けるブタ小屋でのSEX(相手は小林稔侍!)。根津とつるむ気のいい蟹江敬三は、ともにシャブ中仲間。

舞台は80年代の鹿島臨海工業地帯。勢いよく進む工業化と、疲弊する農村が奇妙なバランスで共存している地方の現状を土台に、専業農家だけでは生活しきれず副業をせざるを得ない根津甚八一家。農地を工業団地用地として売り払い、その立ち退き料で建てた豪邸に暮らす蟹江敬三一家など、工業化と過疎化の隙間で崩れ去っていく農村共同体にしがみついて生きる人々がリアルに描かれる。

落魄した根津甚八が眺める、風渡る水田の緑の稲穂。あるいは葉裏を光らせて揺れる木立ち……インサートする自然風景と、闇に浮かび上がる工場群や砂まみれの産業道路の対比。――秋吉久美子が、根津甚八が、そしてこの土地に暮らす人々が等しくわかれを告げた「愛しき大地」は、これらのどちらだったのだろう?

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物語
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