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ユニコ 魔法の島へ (1983)

監督
村野守美
  • みたいムービー 4
  • みたログ 38

4.30 / 評価:10件

悪役の哀愁と小さな英雄

  • s***** さん
  • 2019年6月24日 4時48分
  • 閲覧数 418
  • 役立ち度 4
    • 総合評価
    • ★★★★★

いつもは未視聴の方へおすすめの意味でネタバレなしで書いているのですが今回どうしてもラストについて触れたくてネタバレありにしてしまいました。

四万五千枚のセル画の三分の一が透過光であると説明にある通り光の効果が派手で大きなスクリーンに映えそうな作りだと思います。
クリエーター達が参考映像として上げるのも納得がいく映像美を楽しみました。

ストーリーはどこか童話的なのに戦闘シーンがスピーディかつ煌びやかで、何より敵の恐さが凄まじく子供に見せたいメッセージ性を含みながらも勧めにくいのは一つの欠点かもしれません。
もちろんそのサスペンス、ホラー演出が作品の持ち味であり名作の要素の一つではありますが子供に見せにくいのはやはり勿体無いと思うのです。
それほどテーマ性に感銘を受けました。

そのテーマ性の一環を担ったのはやはり悪役ククルックの存在です。
ククルックは人形劇で使われていた悪役用の人形でした。
糸が絡まったという理由で海に投げ捨てられて人間への憎しみからいつしか魔法使いになり今度は人間達を生き人形へと変えお城を作っているのでした。
冷酷に魔法を使う傍ら一人部屋に籠って人形劇で寂しさを紛らわし、悪役としての賛美に喜びをしめす。
何処か人間臭いその姿は人間や視聴者の子供達を怖がらせる役目の悪役の枠を超えて、哀愁を漂わせ奥行きのあるキャラクターとして描かれていたと思います。

主人公ユニコはククルックの倒し方を地の果ての木馬から聞きますがそれは
(勇気と愛)でした。
この瞬間正直に言うと私はここまでの重厚な世界観から覚めてしまいました。
ラストへの悪い予感がしてしまったのです。チープで幼児性的なテーマでこの物語は終焉へ向かうのだと。
自分が子供向けを見ているくせにそんな文句を抱くのはおこがましいのですが。
最後まで視聴した今はその時の私に張り手をしてやりたくなります。

最終決戦で向かい合うユニコとククルック。
絶対的戦力を持っていたククルックに対し本気を出さずしてククルックを簡単にいなすほどの力をユニコが持っている事が明らかになります。
ここの物語ギリギリまで本当の戦力差を明かさない構成に痺れました。
そんな力を持ち合わせていながら逃げ惑っていたユニコにはある理由がありました。

(だってククルックさん可哀想なんだもの。)

ユニコはククルックの寂しさを知ってしまいました。
知ってしまったから許してしまうのです。
私は人間の一番尊く強い力は(許す)という事だと思います。
ククルックはそんなユニコの姿に
(やめとくれ、そんな優しい言葉をかけないどくれ)
と小さく小さくなっていきやがて元の裸人形になって消滅してしまうのです。

どうしてククルックが小さくなって消えてしまうのか?その要素は二つあると考えます。
一つは人間の悪意の消滅です。
憎悪というものは人間を孤独にすればするほど募り大きくなります。
やがて募った憎悪は他者への悪意とかし攻撃になっていきます。
しかし他者からの共感によって悪意は小さくなっていきます。
人間に苦しめられしかし人間に癒されていくその姿の体現がククルックの消滅なのだと思います。

もう一つは悪役としての役割の終焉です。
ククルックは数ある芝居の中常に悪役としての役割を与えられていました。
恐怖対象と表現される事を嬉しく受け取る姿勢をとっているのは単に性格の捻くれからだけでは無く素直に悪役としての(つまり存在意義の)賞賛だからでは無いでしょうか。
作家は良く生み出す事自体へのパロディに近い風刺を書きます。
いつも物語で悪役にされるキャラクター、スポットライトを当ててもらえぬ悲しいさだめを抱えたキャラクターの存在自体がククルックなのです。
ククルックへの肉体的な攻撃はむしろ彼が喜んで受けていたに違いありません。
正義の心を持った英雄が悪を討ち亡ぼす姿は何度も演じてきた物語です。
恐らくですがこのシナリオでは人々は人形から戻れなかったのでは無いでしょうか。

何故ユニコの同情的な言葉に苦しみ消滅してしまうのか?
それは彼の悪役としての存在意義を否定してしまったからです。
ここで地の果ての木馬が言ったククルックの倒し方が生きてきます。
(勇気)を出してククルックと語り合い、(愛)を持って分かり合う事。
ユニコの愛はククルックを悪役という舞台から降ろしてしまったのです。

そしてラスト、ヒロインチェリーが魔女の服が脱げてしまったククルックの人形を抱えて物語は終わります。
チェリーの兄ドルビーが(お前は人形が欲しかったのだろう)と彼女に魔法で人形を出しましたがチェリーは投げ捨ててしまいました。
その彼女が今度は悪役という服を脱いで裸の人形となったククルックを抱き上げ終焉を迎える。

心の隙間を埋めるのは愛なのだと、シンプルながら美しいラストに晴れ晴れとした気持ちになりながらレビューを書きました。

詳細評価

物語
配役
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音楽

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