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神田川淫乱戦争 (1983)

監督
黒沢清
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3.91 / 評価:22件

黒沢清・周防正行・塩田明彦の陣地戦

  • 諸星大五郎 さん
  • 2009年3月28日 2時34分
  • 閲覧数 1144
  • 役立ち度 20
    • 総合評価
    • ★★★★★

 近代邦画史にその名を刻むATG。
1961年から商業主義とは一線を画す映画を制作し、若手監督たちの登竜門となった。60年後半から70年代に入り、ATGは全共闘世代、いわゆる団塊の世代に支持される思想色の強い作品を世に送る。

 80年代に入り、ATGが娯楽作品に傾斜していくことに対し、アートシアター・ギルドが旗揚げされる。
中心になったのは相米慎二、長谷川和彦ら。
私にはアートシアター・ギルドと言うとアナーキーな作品のイメージがある。

 本作はアートシアター・ギルドの作品で、黒沢清監督の初長編映画。
周防正行さんと、塩田明彦さんが助監督。
周防さんは本作で、主人公たちが覗きをしている神田川の向こう側に立つマンションの管理人役でちょい出をしている。さすがに若く、童顔。

 この作品の翌年、周防監督は国映で初商業映画「変態家族兄貴の嫁さん」を撮るが、その作品がフランス文学者で映画評論家の蓮實重彦氏の絶賛を受け、氏は一躍邦画界に名を知られることになる。
黒沢清さんも周防さんも大学で蓮實重彦氏の薫陶を受けていたようだ。

 本作はエロ映画ではない。
いや、成人エロ映画なんだが、80年代のノンポリ学生が、ノンポリであることをひとつの誇りとして、ナンセンスエロを撮った風な感覚がある。
アートシアターギルドも、ある意味「非商業主義的」映画を目指したから、そこに受け入れられるように、思想性があるようにカモフラージュしてはいるものの、本作は根本的に、「無意味」を撮っている。
本作は全共闘世代のサブカルをおちょくるためにのみ存在したのである。

 私もこの時期、大学を中退しているから、巨大な壁として立ちふさがる全共闘世代のサブカルチャーを、感心した風な顔をしながらおちょくる、この作品の強かなシニカルが理解できる。
「神田川」とは、全共闘世代のフォークの神様「かぐや姫」のヒット曲だ。
本作のエロは、まるで「神田川」の歌うナルシーな四畳半世界を皮肉っているかのように私には思え、至極痛快である。
 
 黒沢清、周防正行、塩田明彦は、こういう作品から映画人生をスタートした。
思想性に縛られた、この前世代の監督たち、大島渚、吉田喜重などを軽々と飛び越え、彼らはその後、一気に商業娯楽作品を撮るようになった。
彼らはもともとノンポリなのある。
 
 80年代以降、今日に至るまで、新時代にデビューする監督たちは、黒沢清たちが本作で築いた「全共闘世代防波堤」映画のお陰で、思想映画という呪縛から解放され、いわばなんでもござれ、映画撮るのに、怖いもんなんかはなくなったわけである。

映画は☆2だが、全共闘世代の呪から遁走し、新時代を切り開こうとする志に☆5

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