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ふるさと

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5.0

ネタバレじいさんと少年

 「ドライビング・ミス・デイジー」と同様、痴呆症老人を題材にしています。老人役の加藤嘉氏の演技が味わい深い。体型や風貌がとても老人らしい老人です。  息子役の長門裕幸もいかにも農家のおとっつぁんという感じが出ていてイイ。自分たちの生活で手一杯で、親父の病状に一日中つきあっていられる時間なんかもちろん無い。高齢者の家族と一緒に生活しているとこんな感じですよね。言葉や態度はぶっきらぼうでも、親を一番心配しているのはやはりこの息子です。  痴呆のため離れに住まわされたことを厄介払いされたかのように思い込み、石で窓ガラスを割る伝三じいさん。それを見ていた孫息子くらいの年頃の隣に住む千太郎少年が「じいはなしてそんなことをするんや?そういうことをするから離れに入れられるんやぞ」といって伝三をたしなめるシーンでは、険しい顔をしていた伝三が素直にその言葉を受け入れて優しい表情に変わっていきます。老人は子どもに弱いですねー。まるで友蔵とまる子のようです。  千太郎少年と伝三じいさんが二人でアマゴ釣りに早朝から山に入ります。釣りの最中に発作を起こす伝三。助けを呼びに山道を懸命に駆け下りる千太郎少年の真剣な顔つきが素晴らしい。その姿を気遣う伝三の声がどこからか聞こえてくる・・「千太郎・・そんなにせかんでもええ・・じいはもう大丈夫じゃ」  全ての思い出はダムの底に封印されてしまいましたが、死ぬまで自分の家族と一緒に生活できた伝三じいさんは幸せだったと思います。  モスクワ映画祭主演男優賞受賞がなるほどと思える加藤嘉氏の演技です。

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