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月蒼くして

月蒼くして

THE MOON IS BLUE

95

gar********

3.0

もう一ヒネリ欲しい作品

ニューヨークのエンパイヤステートビルで、建築家のドン(ウィリアム・ホールデン)は可愛らしい娘・パティ(マギー・マクナマラ)と出会う。彼女に惹かれたドンは、パティを自宅に誘う。しかし、パティのドッキリ発言に翻弄されていく… ブロードウェイで大ヒットを飛ばした芝居の映画化。『ローマの休日』や『地上より永遠に』など、名作ぞろいの1953年に制作されたアメリカ映画の中で、公開時最も物議をかもした作品だそうです。 若い娘と地位もある年上の男…というと1960年代までのハリウッド恋愛映画の定石中の定石といえるテーマです。しかし、この作品はそんな定石を踏まえながらちょっとユニークなヒロインが活躍します。 特にユニークな点は、ヒロインが誘惑を心待ちにしているという姿を描いた点です。それまでのハリウッド映画では、女性は良くも悪くも「受け」の立場です。男から言い寄られて、ためらいながら(ここが重要)も恋に落ちていくというタイプが多かったですが、この作品のパティは、「キスは大歓迎」というセリフからも決してためらいを見せることなく、むしろ自分から積極的に恋をしていきます。まさに、今流行りの「肉食系女子」の走りのようなキャラクターです。しかし、パティを演じるマギー・マクナマラにはそういうちょっと危うい魅力があると同時に、清純さと無邪気さが同居しています。だからこそ、きわどいやり取りをしても、嫌味にならずむしろ「このお嬢さん、良いな…自分に正直で」と好感さえ持てます。 そんなヒロインの魅力を支えているのが男性陣。ドンを演じるウィリアム・ホールデンも良い味を出してますが、一番印象的なのはドンの元ガールフレンド、シンシアの父親スレーターを演じたデビット・ニーブンです。世間の表裏を知り尽くした大人の男、いわゆる「チョイ悪オヤジ」なタイプです。そんな人さえも「小娘」パティに惑わされてしまう所が、この映画のおもしろい所です。特に印象的だったのが、ソファで横たわっているスレーターにパティがスレーターの顔を上からのぞきこんで「あなたって目じりが素敵よ」というシーン。その後スレーターは、「君に唇から出血するほどキスしたくなった」と言います。世間知らずな小娘の思わぬ魅力に惑わされた、中年オヤジの狼狽ぶりがコミカルなシーンでした。 ただ、ちょっと残念なのは今一つ人物を動かしきれていないのと突如新しい人物が登場してしまい、つながりが悪くなってしまった所です。もうちょっと工夫すれば、名作の域に達するのですが、ややパワー不足の感が否めないです。脚本が良いので、もっと一ひねり欲しい所です。 個々の出演者は魅力的だが、脚本にもう一ヒネリ欲しい作品。

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