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月蒼くして

月蒼くして

THE MOON IS BLUE

95

lub********

3.0

たいして蒼くない

1953年当時、ヒロインのセリフが過激として規制を受け、反骨の塊プレミンジャー監督が映画協会脱退してまで上映し、物議をかもした作品。 今見るとどこが過激か不明。「プロの処女」というセリフが面白かったが、若い娘が「情婦を買わないの?」「キスが好き」レベルの発言で目くじら立てる程モラルの高い時代だったということか。 女性のふしだらに厳しい割に男性のふしだらには鈍感だ。主人公は婚約者と喧嘩したばかりで、小娘にしか見えない女性を誘う。とれた服のボタンをつけてくれという古い手で家に誘う(実は彼女の裁縫針をこっそり隠す男)。それがズルではなく恋の手口として粋と思うなら、処女発言位で怒るなよ。 彼が連れ込むマンションの上階には婚約者がいてエレベーターで鉢合わせする。 その辺の男の意識の緩さの方が笑える。そもそもナンパした女性に、「君はいい子だと思ったのに」と貞操観念を求める身勝手さの方が偏っていると思う。彼は婚約者とハッキリ別れたという感じでもなく、曖昧だ。 つまり女性の性に関するアンモラルには厳しいが、男性に対してはご愛敬程度に緩い。別にフェミニストではないが不公平感がすごい。そっちの方が、今見ると笑える。 スクリューボール・コメディ(変人・変化球)と聞いたが実際は舞台の翻案であって、台詞の応酬の魅力が殆ど。トンデモ展開もなくとても地味だ。 前述したようにナンパ方法がみみっちく現実的なので、洒落てる気もしない。偶然王女を拾うミラクルとは違う。瓢箪から駒式に嘘が嘘を呼び、騙しが騙しを呼ぶクレイジーなスクリューボール展開ではない(スクリューボールという分類自体当時はないが)。考えるとリアリストのプレミンジャーが、そんなもの描くわけがない。 結局、舞台劇として見るとヒロインがコケティッシュでキュートかなって位。相手のウイリアム・ホールデンがもっと振り回されて酷い目に合えば、もう少し笑えるけどなぁ。 タイトルの意味は「(月が蒼いのは)極めて稀なこと」という慣用句からの引用らしい。 稀と言えるほどの傑作かというと、この月はそんなに蒼くない。

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