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薄化粧

薄化粧

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par********

4.0

もうひとつの『鬼畜』

緒形拳といえば『鬼畜』の鬼気迫る演技が忘れられないが、こちらの「鬼畜」も凄味がある。無教養な男が、大金に目を眩ませ、女に狂い、手を血に汚しながら身を滅ぼしていくさまを描いていく。刑事が言う「いい女とさえ出会えていたらなあ」という言葉が忘れなれない。つまり「悪い女」が男を堕落させたという考えが作品の通底にあるが、しかしそれと母子と若夫婦の惨殺を簡単に結びつけて良いものかと少し考え込んでしまう。 過去パートと現代パートが交互に描かれており、「いま」どうして男が警察から逃げる羽目に陥ってるのかを「過去」編で徐々に明らかにしていくという構成で、男が泡銭から女を手駒にしたつもりが逆に手駒にされ・・という流れを性とバイオレンスを交えながら情けなく描く過去編は傑作と言っていいほど面白いのだが、それに比べて現代パートは凡庸な内容で、その落差が勿体無い。 「悪い女」に出会ったのが過去編、「いい女」と出会えたのが現代編という対比になっているのだけれど、「いい女」との掘り下げが甘いので単なる性愛のようにしか見えないし、何より過去編と現代編の男の変節ぶりが余りに不自然だ。二人が同じ人物として繋がらない。今と過去の橋渡しをうまくやれていたら良作だったのになと思う。 女に翻弄される男を見事に演じた緒形拳も素晴らしかったが、女優陣も同じくらいよかった。浅野温子・宮下順子・藤真利子・・・女性をエロティックに映し出すことに関して五社英雄に並ぶものはいない。

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