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君は裸足の神を見たか

4.0

ネタバレ神を失った者こそ神にちかづく

77点 舞台は秋田県の田舎町。 画家志望のシゲルと詩人志望のシンジの二人は同じ高校に通う幼なじみ。 シゲルは好きな女の子がいて彼女にぜひ絵のモデルになってほしく思っているが、声すらかけられないでいる。 シンジにもヒトミとゆう好きな子がいて、シゲルは自分の恋路は放置して二人をくっつけようと世話をやく。 けど、ヒトミは本当は小さい頃からシゲルが好き。 と、序盤だけみるといかにも若い監督が撮ったらしい甘酸っぱそうな話だけど、やはりATG 。 甘酸っぱい話がだんだんしょっぱくなっていき、なんだかわからない苦みへと発展していく。 詩人志望と出戻り詩人。  友情より性欲をとるシゲル。 宗教なんてくそったれと肉欲にふけるキリスト教信者のヒトミ。 シンジの電気自殺。 前半とラストにおけるシゲルの謎のフェイスペイントなど、映画は予想外に複雑な構図を投げかけてくる。 キャスティングもいろんな意味でおもしろい。 ヒトミを演じるのは洞口依子。 この人をみるのは「ドレミファ娘」以来だけど、とても個性的なファニーフェイスをしているので一度みたら忘れられない。 顔の時点で求心力をもついい女優だと思う。 あと、なぜか出川。 役者を目指していた頃の若い出川哲郎が、シゲルの同級生役として登場する。 シゲルの母の「芸人なんて(世間の)最下層」ってセリフと、シゲルをバカにした出川が川に突き落とされるシーンがなんだか今後の彼を暗示してる。 それとシゲル憧れの女、ハルヨ。 これを演じてる「 会沢朋子」って名前どっかで見たなと思って調べてみたら、『台風クラブ』のレズ女子やすこだった。 たったの一年しか経ってないのにメイクばっちりだったのでまったく気づかなかった。 ちなみに出演作はこの二本だけ。レアな女優がみれてよかった。 シゲルは親友に死なれ絵のコンクールに落選し、マリアであったハルヨとは一言も言葉を交わせないまま教会でマリア像を破壊する。 セフレ化していたヒトミとも別れ、へこみの底辺に落ちたシゲルは父を張り倒して夜の雪景色へ裸足で飛び出す。 夢も友も恋も、虚無感を埋めるための肉もすべてを失った少年を乗せて電車は走る。 愛も目標もない彼にあるのは広大な寂漠。孤独。不安。 けれど忘れてならないのは、価値体系や神を失った者にこそひらける自由な視界を必然的に獲得してること。 割れた窓にうつったシゲルの顔のしるしはカインの徴か。神を失った者こそもっとも神にちかい。 少年のまえに道もなく遮るものもなく、もうなにもない。そんな『なにもない』中から神のような中心を探しださなければならない義務を必然的に背負ってしまうから。 それは創世のようなもので、創世こそ青春の本筋。 ごちゃごちゃと書いてしまったが、 ようはこれはめっちゃストレートな青春映画。 卵を破った若者が広い世界におののくさまを描いて映画は終わる。 話のほうはなにかとキリスト教くさいところがあるので、キリスト教に精通していれば解釈も変わるのかも。 とにかく若い人が若い映画をちゃんとつくってる、そんな当たり前のことがとても嬉しく、心地よく感じられた。

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