人間の約束
作品レビュー(7件)
- エル・オレンス
4.0点
千秋実主演の『花いちもんめ』(1985)もそうですが、年老いた家族に対する「あれ?」って感じる瞬間は、ある日突然やって来るんですよね。 決して綺麗事じゃないリアルな介護の壮絶ぶりが2時間たっぷり描かれており、超高齢社会の今を生きる我々に強く突き刺さります。 社会における認知症患者の受け入れ体制が不十分だったり、介護が当然のように嫁の仕事だったりと、1980年代当時の社会状況もよく伝わってきます。 三國連太郎は、当時60代ながら、80代の老人にしか見えない演技を披露していて流石! 若き息子・佐藤浩市との共演にも驚き。『美味しんぼ』以外の共演のイメージが無かったもので。
- cyborg_she_loves
5.0点
ネタバレ正義って何だろう
このレビューにはネタバレが含まれています。 - ********
5.0点
「人間の約束」というタイトルですが、なにか人間的なことが描かれているわけではありません。「老い」がテーマですが、介護する家族の人間的な苦悩なり成長なりが描かれているわけではまったくないのです。 まったく反対に、描かれているのは「人間の約束」がいかにもろくはかないものであるかということです。「約束」ではなく「お約束」。ボケてしまった女性はなぜ死んだのかをめぐって進む犯人探しでもあるのですが、犯人は判明しない。だれが殺したかは明確になるのに、かばっているうちに本当に犯人だと思い込んだり、別の誰かが現れたり。犯人逮捕は「お約束」でしかないのです。そして、あらゆる「お約束」が崩れていく。ボケた女性は食事もトイレもやりたい放題、挙句の果てに息子に欲情する。老人の性+近親相姦という二重のタブー(お約束)を破っています。 そして、三国連太郎演じる老父が、だんだんボケていく過程がまたすごい。鏡をみて、他人と思ってあいさつしてしまう。すると鏡の横には「鏡にうつっているのは自分です」とあって、その言葉によって、自分はボケているのではないか、と疑う。その疑いがボケ始めるきっかけです。ボケているからあいさつしたのではなくて、あとから、それがボケだと指摘されることでボケていく。 ボケることで「お約束」の世界から逃れる老人たち。そんな老人たちはいたるところで「死なせてくれ」といいますが、それは、さらに「お約束」から逃れるため。ボケ始めた三国は妻を殺そうとなんども試みて失敗する。なぜなら、死ぬことよりも、さらにボケることのほうが、いたるところで失禁し、近親相姦を妄想することのほうが幸せだからです。(妄想のなかの巡礼シーンの美しさ、思い出のなかの川の美しさをみよ!!)だから、本当に殺してしまうのが「お約束」から脱しつつある夫ではなく、「お約束」にしばられた息子なのです。その後、泣き崩れる息子の悲劇的シーンは、近親相姦を犯したうえで母親を殺したギリシャ悲劇のヒーローの嘆きです。 「老い」をテーマに、「お約束」の崩壊と、母と息子、妻と夫の間の愛憎を盛り込んだ、すごい映画です。鏡と水鏡の違いなど興味深い映像も満載です。必見。
- dqn********
4.0点
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5.0点
吉田監督らしい素晴らしい傑作です。 人間の精神の狂い、衰え、本能、全てを強烈に描いています。 完成度は非常に高く巨匠渾身の力作ではないでしょうか。
- yko********
5.0点
見終わった後、心が痛くて痛くてたまらなくなる映画。 最初にでてくる書道の字や、家の書作品や美術品、生け花が存在感があるのにさりげなく物語に色を添えている。 人が老いるのは人間のお約束であり、誰も逃げられない事実である。 吉田監督はその『人間の約束』を淡々と描いている。 あらゆる細部にまでこだわりがあり考えぬいて作られているのが伺える。 鑑賞する価値のある映画である。
- his********
3.0点
20年以上も前の作品であるが、テーマが普遍的なものだけに、そんなに古さを感じない。少々ナ長い気がしたが、主役の老夫婦の演技は生々しく、凄みもあった。それに比べ嫁の演技は、オーバーリアクションで少々残念だった。