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野ゆき山ゆき海べゆき (1986)

監督
大林宣彦
  • みたいムービー 13
  • みたログ 127

3.44 / 評価:45件

君が瞳はつぶらにて 君が心は知りがたし

  • bakeneko さん
  • 2020年6月23日 8時05分
  • 閲覧数 444
  • 役立ち度 3
    • 総合評価
    • ★★★★★

俗に門弟三千人といわれ、井伏鱒二、太宰治、檀一雄、吉行淳之介、稲垣足穂、龍胆寺雄、柴田錬三郎、中村真一郎、五味康祐、遠藤周作、安岡章太郎、古山高麗雄らを輩出した戦前戦後の文壇の巨人:佐藤春夫の「少年時代」の詩にインスパイアされた大林宣彦の作品で、太平洋戦争の瀬戸内の小村で少年期を過ごす主人公の“腕白戦争ごっこ”と当時の“軍部の跳梁と国家翼賛に覆われた世相”を懐古的に描きながら、少年期の年上少女へのあこがれ=淡い恋の永遠性を浮かび上がらせてゆきます。

撮影はカラーネガですが、劇場公開時には「質実黒白オリジナル版(モノクロ)」と「豪華総天然色普及版(カラー)」の両方が同時期に劇場公開された作品で、両者の違いは、カラーを単にモノクロにしたというわけではなく、モノクロに合わせた編集が施され、音楽も異なるという異色バージョンが存在することでも有名な作品であります。

太平洋戦争に日本が突入する頃、医者の息子須藤総太郎(林泰文)が通う瀬戸内の城下町の尋常小学校に、大杉栄(片桐順一郎)という転校生が美しい姉:お昌ちゃん(鷲尾いさ子)に付き添われてやって来る。直ぐにガキ大将同士のマウントの取り合いが始まるが、なかなか勝負がつかず怪我人が続出したので総太郎は、お昌ちゃんの懇願によってルールを決めた「わんぱく戦争」を提案して子供たちは戦争ごっこに明け暮れるが、やがてお昌ちゃんが遊郭に売られていくことを聞き及んだ少年たちは…というお話で、当時20歳の鷲尾いさ子のデビュー作としても有名であります(清純なヌードシーンもあります♡)

戦争から遠く離れた瀬戸内の町で“子供の時間”を過ごす子供たちが体感した“戦争の影”と“愛の昇華”を、サイレント映画の様な非現実性とスラップスティック演出で描きながら、少年期をノスタルジックに回顧してゆく作劇となっていて、子供たちが繰り広げる“腕白戦争”はフランス映画「わんぱく戦争」(1962年)をそのまま映像化したかのような愉しさと共に、大人の戦争への風刺となっていて、転校生の名前:大杉栄や陸軍中尉(佐藤浩市)らに瀬戸内の小さな町に代表させた戦前の日本の縮図を深読みすることもできます。

子供視点でディフォルメされた事象で戦争と当時の世相を描いてー「ブリキの太鼓」や「ジョジョラビット」なども連想させる作品ですが、“去って逝った永遠の憧れ”を哀しくも美しく回顧するノスタルジーで締める―まぎれもない大林映画であります。

  
ねたばれ?
1、佐藤春夫「少年時代」全文
   1
野ゆき山ゆき海辺ゆき
真ひるの丘べ花を敷き
つぶら瞳の君ゆゑに
うれひは青し空よりも。
   2
影おほき林をたどり
夢ふかきみ瞳を恋ひ
あたたかき真昼の丘べ
花を敷き、あはれ若き日。
   3
君が瞳はつぶらにて
君が心は知りがたし。
君をはなれて唯ひとり
月夜の海に石を投ぐ。
   4
君は夜な夜な毛糸編む
銀の編み棒に編む糸は
かぐろなる糸あかき糸
そのラムプ敷き誰(た)がものぞ。
2、いつも持ち歩いているあの本は傷まないのかな?

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

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