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吉原炎上 (1987)

監督
五社英雄
  • みたいムービー 91
  • みたログ 841

3.74 / 評価:289件

地獄めぐりへの耽美の視線

  • kot***** さん
  • 2017年11月30日 15時55分
  • 閲覧数 5527
  • 役立ち度 9
    • 総合評価
    • ★★★★★

昨今のせわしない映画にはない、豊かな映像と、人間の業の深さを堪能できる、今後も廃れる事はないであろう傑作。

見事な遊郭のセット、明治後期の和洋折衷デザインの美しさ。

豪華な役者陣に、たっぷりと演技の「場と時間」を与えるカメラワーク。

アクション満載、冒頭から、検梅をひやかす子供達に追われる女郎が、電柱に抱きつく太ももが露な姿。
女同士が肌を曝け出しての大喧嘩。
広い三階建ての遊郭を裾をひるがえして駆け回る。
川に飛び込む捕り物。
燃え上がる女郎屋から半裸で飛び降りるスタント。

部屋の外から、三味線、太鼓、笛、唄声が被せられ、欲深い人間の哀しい営みに、滑稽さが足される。

めぐる季節の緻密な表現。
雨、雪、風。桜、紫陽花。汗ばんだ肌、白い息。

吉原の女を象徴する血の色、赤が浮き立つ。
布団、襦袢、金魚、ほおずき。
女同士が絡む布団と襦袢の赤。
堕胎の苦しみが川面に広がる赤。
気狂いの淫乱と化し血を吐く布団部屋の赤は、地獄の底のよう。

胸、乳首、太もも、足の指、唇、舌、うなじ、みだれ髪。
クロースアップにもロングにも、女の肌への執拗で耽美的な眼差しがある。
____

久乃、若汐、紫(名取裕子)。
主人公であり、吉原の地獄の案内役でもある。
無垢な少女が、地獄めぐりの末、紫太夫を襲名、御職になる。
花魁道中という一瞬の煌めき、血と涙の徒花を咲かせる夢を見るようになる。
「惨めな女になりたくないんだ。嘘だっていい、この嘘の世界で一番大きな花咲かせたいんですよ」
桜の舞う中、花魁道中の夢を叶えた後、資産家の身請けを受け入れ、地獄に別れを告げようとした時に、吉原炎上、忘れられぬ男の元へ駆け戻り、吉原の最期を見届けることになる。

九重(二宮さよ子)、御職。
明治四十年、春。
吉原の地獄をよく心得ている。
客と寝れぬ若汐に指南、無自覚の同性愛嗜好、若汐の女の才覚を見抜く。
馴染みの男の学費を出してやるが、婚約を言いだされると鼻で笑い、泣く。
遊女に残された道を知る、ひとり去っていく。
「花が散ればお前は用無し、今さら見栄も花道もいらないよ」

吉里(藤真利子)、二枚目から御職。
明治四十一年、夏。
馴染みの男との恋に賭けるが裏切られ、別の客を心中に誘う。
「郭の中はみんな戯れ言、嘘だらけ」
芝居だったはずが、吉原の人間が女郎の上前を撥ねているだけでなく、自殺という悲劇まで期待していることに気付き、自殺。
若汐は墓前に「弱虫」と吐き捨てる。

小花(西川峰子)、三枚目から御職。
明治四十二年、秋。
生まれついての悲痛な人生、その哀しみを誤摩化す、自尊心からの虚言癖。
男に求められる事、御職という自尊心も、梅毒のため奪われ発狂「ここ噛んでー!」
淫乱の妖怪となり病死。
紫「あんた、一体今までどんな目に遭って来たのよ…」

菊川(かたせ梨乃)
明治四十三年、冬。
嫌な客に小便をひっかける、遊女になりきれない要領の悪い女。
品川に住み替えさせられるが、大工の棟梁と結婚。
しかし若い女に寝取られ、吉原の女郎長屋に戻る。
元亭主の病気、浮気相手の女になけなしの金を渡す。
未熟な女郎の恋の世話を焼く。
「諦めなされ」と唄いながらも、人間に希望を諦める事が出来ない女。
百年に一度の花魁と呼ばれるようになった紫と決別。
「あんたは吉原の嘘で練り上げられたお人形さ」
「あんたに淫売の本当の本当なんてわかってたまるか」

古島(根津甚八)
御曹司でありながら救世軍。
そのくせ、遊郭で散財、しかし女は抱かない。
アンビバレントな男、清濁併せ呑めず、無垢さ純粋さを求める、坊や。
「僕は所詮、空想しかできない男だ。事業も正義も、恋まで、何もかも空想だけなんだ」
最後には、まだ幼い無垢な女郎と心中。
____

『吉原炎上』に貫かれている視線は、堕ちていく事への耽美、憧憬。
虚飾と知りつつも、一瞬であれ美しく輝く事が、ままならぬ人生のひとつの救いのあり方でもある。
それは、大昔から続く売春の実相。
女性が自ら選択して体を売るようにもなった昨今。
一見変わったようにも見えるが、心の一番奥底にある欲望は、もしかしたら変わらないのかもしれない。

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