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或る夜の出来事
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或る夜の出来事

IT HAPPENED ONE NIGHT

105

とみいじょん

5.0

恋をしたくなる。旅をしたくなる。

満ち足りた余韻を残すデザートのよう。  まるで、時間が経つほどに豊かな味わいが広がるチョコレート。  ビターな味わい、ピリリとした味わい、ざらつく食感、はじける食感、そして最後は程よい甘さ。 深窓の令嬢と新聞記者ときたら『ローマの休日』?と思ったら、こちらが元ネタだった。  しかも美しくまとめられた『ローマの休日』に比べて、こちらはパンチが効いている。 『風と共に去りぬ』で有名なゲーブル氏。『風と共に去りぬ』はいくつかのシーンは見たことがあるけれど、まだ通しで見たことがない。  意外にも、ゲーブル氏初見だった。  格好いい。どことなく、若い頃の三國連太郎氏を思い出す。でも、格好いいだけではない。生活力のある優しさを振りまく。あんな瞳で見つめられたら、彼に恋しない女子はいないんじゃないか。  それでいてお茶目。運転しながら、有頂天になっている様。その後の顛末を知っているからこそ?おかしくて切なくておかしくてたまらない。  こんなコメディタッチの演技もなさるんだ。  ゲーブル氏の幅の広さを堪能した。 相手役のコルベールさん。  高慢ちきな令嬢の顔をするかと思えば、勝気な表情、初めての経験に戸惑い、はしゃぐ姿、次第にピーターを信頼し、心を寄せていく姿…、失望した様子。そして人参をかじる様子がかわいらしい。  エリーの成長譚でもある。 お父さんが、エリーの結婚に反対したところから物語が始まる。  うん、二人が結婚したら、誰が稼ぐんだろう。あっという間に財産食いつぶしそうだ。そりゃ、反対するよなあと思うけれど、過干渉に嫌気がさしていたエリーには、お父さんの真意は伝わらない。 家出するエリー。恋人の元へ。  その道中で知り合う二人。  出会いが見事。道連れとしてのエピソードが見事。  本来なら大金持ちのエリー。問題にぶつかってもお金で解決!のはずだった。たんにバスに乗っていれば、バスが恋人のいる街に連れて行ってくれるはずだった。  けれど、物語はそう簡単には進まない。  賞金をかけられた逃走劇。追っ手をどうかわすか。しかも、さまざまな出来事に遭遇し、所持していたお金を失い、無一文でどう旅を続けるか…。  そんな中で、エリーはスクープ狙いのピーターを煙たがりながら、顎で使いながら、頼りにしながら…。  ピーターの方も、行動はエリー・ファーストでいながらも、言いたい放題、口八丁。  共に旅を続けていくが、素直じゃない二人。  この二人のかけあいにどんどん引き込まれていく。    どうなる?どうする?  ロードムービーとはいえ、基本長距離バスがメインなので、そう風景が変わるわけではないのだが、テンポよく進んでいく。  旅する楽しさまで味わえる。  そして、無事エリーが恋人の元にたどり着いて「めでたし、めでたし」では終わらない。  さあ、どうなる?どうする?  恋人に再会してからが、一番、ハラハラドキドキさせる展開…。  そして…。 筋は多少、ご都合主義なところもある。  あと、(字幕日本語訳で)お父さんの言う「お前には殴ってくれる人が必要だ」は言葉のままでとると、時代とはいえ、ブーイングもの。ここの意は「お前には、(太鼓持ちではなく)叱ってくれる人が必要だ」ということだろうと解釈。 低予算、かつコルベールさんのスケジュールの都合で撮影期間が4週間しかなかったとDVDの特典で知った。  だから、セットを作っている暇がなくて、ロケを多用。コルベールさんの衣装も3着とか、かなり工夫しているらしい。。  それでも、こんなに粋な映画ってできるんだ。 ふさぎこんだ心も愉快になれる映画です。

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