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ダウンタウンヒーローズ

gah********

5.0

ネタバレ恐怖マッカーサーの首!答えは映画にて

映画「出口の無い海」のラストで年配の老人が大学野球の試合を眺めているシーンがありました。どこかで見たようなシーンだなと思ったらこの映画「ダウンタウンヒーローズ」でした。ダウンタウンヒーローズでは老人が学生のラグビー部の試合を見てるシーンでした。脚本が同じ山田洋次氏だということで素直に納得です。この連想が今年にこの映画をDVDで見返すきっかけでした。 私がこの映画を見たのは18年前で当時土曜の夜に大阪のラジオ番組「サタデーバチョーン」で浜村淳さんが映画を紹介するコーナーがあって、この映画の紹介をしていたからです。浜村さんはその独特の語り口で映画のあらすじを解説していてそれはそれはすごく面白く語るのです。 浜村さんの語り口にすっかり魅了された私はさっそく見に行きました。 スクリーンには私の知らなかった戦後の旧制高校の風景がありました。舞台は昭和23年の戦後間もない四国の松山高等学校で全寮制なのか?多くの学生が学生寮で寝泊りをしている訳です。学生達は多くが長髪でぼろぼろの制服、清潔だとは言いがたいその身なり。いわゆるバンカラという奴です。何故かドイツ単語が使われ、みんないつも腹を空かしている、だけど何故か格好よくって何故か熱く、現代には無い生き生きとした活力がみなぎっているのです。 この映画の主だった登場人物は松高生の洪介(中村橋之介)オンケル(柳葉敏郎)アルル(尾美としのり)ガン(杉本哲太)等でヒロインは近くの女学校のマドンナ房子(薬師丸ひろこ)と女郎宿から逃げてきた咲子(石田えり)であります。 この映画、色々な素晴らしい要素が盛り込んであるので全てを語ることはできないですが是非、多くの人に見てもらってこの映画のよさに気づいてもらいたい物です。レビューのタイトルの意味は映画で見つけて下さい。 物語の途中、松山高で文化祭が行われ、物語の一つの見せ場になるのですがその文化祭で洪介達「東寮」の寮生達は「理髪師チッターライン」という芝居をする事になります。本来男ばかりの学校なので女子校のマドンナ房子に芝居のヒロインとして出演の依頼を快諾してもらいます。房子に想いを抱くオンケルは芝居の演出なのですが実際の台本では芝居のラストは悲劇になります。しかし、オンケルはどうしても芝居のラストを救いのあるものにしたかったのです。(このオンケルの思いに山田洋次監督の映画哲学があると思います。私的にはZガンダムのラスト賛否論を連想します。富野さんはこの歳で山田洋次監督の域に来たのかな?)結局文化祭の演劇では悲劇バージョンのラストが用いられます。 文化祭の後にオンケルは房子に対する想いが募りすぎて体調を悪くし、部屋にこもるようになります。その間、セキをしながら何十枚にも及ぶ熱く、厚いラブレターを綴り、それを洪介に託し、房子へ届けてもらいます。しかし、実は洪介も房子が好きで房子もまた洪介が好きだったのです。房子は洪介がオンケルに頼まれたラブレターを持ってきたこと、オンケルがラブレターを人に託した事両方に怒り、心血注いだラブレターをろくに読みもせずにつき返します。このラブストーリーもまた今ではあまり見かけなくなった純愛をしている主人公達のさわやかさと苦悩を感じられてとても切なくなります。人は肉欲を介さないプラトニックラブを通してこそ相手に深い人間としての価値を感じるのではないか?等と思います。(もはや古い価値観かな?やはり古いか・・) オンケルの恋はその情熱が空回りして失恋で終わり、その後オンケルは失踪し、寮では自殺したのでは?と案ずる者もいました。が彼は芝居小屋で時代劇の演出をして元気に暮らしていました。お題は「理髪師チッターライン」を日本の時代劇にしたもの。そこで彼は救いのあるエンディングに脚本を書き直して上映していたのです。(まさに映画版Zガンダム状態!)また時が経ち、オンケルは街のやくざとのケンカで亡くなり、クリスチャンのアルルはネパールの無医村で医師として働き、洪介はオンケルの後を次いでシナリオライターになります。 この物語は一人の老人(洪介)の思い出話であったわけですが、現代の人達に向けられたメッセージも込められています。松高の先生が卒業前の生徒達を前にこう言います。「肥えていくブタは幸福ではない!」と。今の日本は高度経済成長、バブルの時代、学級崩壊の時代を通り、肥えていったブタの行く末に来た気もしないでもありません。今の日本はかっての松高生たちのような生き生きとした活力が必要になっているのではないかと思います。この映画、結構熱意の感じられる作品でしたが興行的には振るわなかったようです。どこか不安で未来が見えにくくある今こそこの映画の良さを感じられる人が少なくない気がします。(でもリメイクは多分失敗するからダメですね。)

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