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利休

利休

135

jac********

5.0

渦巻く男の嫉妬

生け花の家元の勅使河原監督だけに、花や茶器や衣装が見事だが それ以上にキャスティングが見事だ。 山崎努は、この映画を観るまではあまり秀吉のイメージはなかった。 意外性のキャスティングだが、ピタリとはまっている。 岸田今日子も大奥の匂いはするが、北政所は新しい。 山崎さんも岸田さんも名優なのでバッチリこなすが、茶々の 山口小夜子というのは伝説のスーパーモデルだけに驚き。 大政所の北林谷栄は流石の演技で、このために役者をしてきたという 貫禄であるし、秀長役の田村亮というのは私の中の秀長像のイメージが かなり良くさせた。 田村亮が演じると非常に知的な秀長になる。 キャスティング以上に見事なのは、秀吉、北政所、大政所、秀長らが 話す尾張弁だ。 映画史に残る見事さと言っても良いのではないか。 当然、昔は今以上に方言で話していた事は間違い無いのだが、 映画にしろTVドラマにしろ、ほとんど標準語で話している。 全てを方言で話されてしまうと観ているこちらが理解できなくなってしまう ので考え物だが、『利休』は絶妙の割合とタイミングで分り易い尾張弁を 挟んでくれるので、映画全体の雰囲気の良さに繋がっている。 利休という人物、その才が故に、自分の意思とは関係なく祭り上げられたのか? 野心家で自ら政治の場に躍り出たのかは今となっては誰にも分らないが、 その失脚、切腹には「嫉妬」が絡んでいるように見える。 太閤秀吉に重用されている利休に、石田三成やら前田玄以ら奉行は嫉妬して 彼を嵌める。それ自体は現代の人間模様でもよくあることで大して珍しい事 ではないが、太閤秀吉自身も利休に嫉妬している。 利休の才能を純粋に尊敬していた秀吉、ある種、愛していたのだろう。 それが天下を獲り、絶対権力を持ち、自分の意のままにならぬことなど、 何も無いのに、利休の才能だけは自分が逆立ちしても真似できない。 更には、自分が命令しても利休が節を曲げなくなってしまった時に、秀吉の 嫉妬が発動してしまった。 それが秀吉と利休なんだろうと、この映画を観て納得した。

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