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利休

利休

135

kih********

5.0

BGMにまで気を配った丁寧な歴史もの

 歴史上の『利休』についても、茶道についても、殆んど無知の私だが、だからこれがどれだけ史実に近いのかということも知らないままだが、この映画が利休と茶道についてのイメージに固まりそうだ。私にとっての『利休』だ。  三国連太郎氏が演じる利休は如何にも知的。温和な物腰の中にも刺すような一筋の知性が光る。おそらく、秀吉はこの一筋に刺されたのであろう。  宗家の佇まいの落ち着きと清潔さ。茶室の美しさ。静かな流れの中に緊張感のある所作。その諸々が、素人にも良く分かるように丁寧に描かれている。加えて、全体に流れる西洋の古典音楽がいい。バロック直前の音楽だ。天正使節団がローマで学び、帰国後には秀吉らに披露したのがこういう音楽だったはず。それも、控え目に、そして丁寧に流してある。  数年前、京都の庭園巡りをした。その折、大徳寺三門も見たのだが、観光客が多くて落ち着かなかった。中には入れなかった。その点、映画は有り難い。現地ロケかセット撮影かは分からないが、これほど丁寧に作られた映画だったら、観光で行くよりははるかに臨場感をもってその世界に入れる。拝観料がDVDレンタル100円だけというのは、ちと安過ぎる。  この時代の高名な茶人には政治家としての側面があった。発言力があった。それで名声は上がり財を成すこともできた。それが命取りにもなった。利休の場合がそうだったか。茶人と最高権力者 ―― 利休と秀吉の関係には諸説があるらしい。数ある歴史ものの中に、利休切腹の経緯が出て来る。この映画ほどに事は簡単ではない。それでも、この作品は“利休伝説・諸説”の原典になりそうだ。

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