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出張

出張

91

zoo********

4.0

現代の寓話。平凡人の悲哀。

全くの平凡中年サラリーマンが突然、出張先で山岳ゲリラの人質に。 でも、日本だよ、ここは。 ユーモラスな、お馬鹿設定によるストーリーの進行で、観客はこの映画が非常に観念的なテーマを取り合っているとスグに分かる。 石橋蓮司の「情けない人質オヤジ」の演技が光る。 山岳ゲリラもなんかいい加減。このいい加減さでゲリラ集団と人質はすぐ意気投合。 事件は解決に向かうのだが、帰宅した彼を待ち受ける、あまりに現実的な「中年サラリーマン」の悲しみ。 一大傑作映画とは言わない。だけど、何年もたった今でもラストシーンを鮮明に覚えてるんだよね。 結局、うだつのあがらない石橋蓮司サラリーマン、電車に乗ってまた出張。走る列車の中、窓際でぼそぼそ駅弁を食べる。 で、ゲリラと警官隊の(ちょっとしょぼい単発的な)交戦銃撃音が聞こえるのだ。 取り付かれたように列車の窓を開ける石橋蓮司。窓から乗り出し「頑張れよ~~~。頑張れよ~~~。」絶叫する。 「自分に希望なんか無い。才能もないし、努力も、運も無い。学歴も金も地位も無い。希望なんて無い。延々続く、トホホな日常。  でも、世界のどっかに、希望はある。『誰かのための希望』はあるんだ。『自分の希望」』でなくても、『希望』はあるんだ。」という、えらく倫理的な、情けないサラリーマンの心の底にある“人の尊厳と偉大さ”を見せてくれたようなラストシーン。 石橋蓮司は名優だよ。

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