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シコふんじゃった。 (1991)

監督
周防正行
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3.92 / 評価:636件

相撲と立教大学とジョン・コクトー

  • yab***** さん
  • 2016年11月26日 9時45分
  • 役立ち度 1
    • 総合評価
    • ★★★★★

 周防監督の原点を見たい。そんな半ば映画評論家気取りの薄っぺらい気持ちから借りてしまった。
 東日本学生相撲リーグの3部リーグに低迷している立教大学相撲部の話である。
 
 この立教大学相撲部をネットで調べると、現在は部員5名、女子マネージャー2名。かっては学生横綱(故堀口圭一)を輩出した古豪。
 ちょうどこの作品が製作された91年、92年に東日本学生相撲リーグ3部リーグで連続優勝。05年、11年にも優勝するなど、3部リーグでは強豪校?と言える。ただし、部員5人の平均体重は69Kgで、この作品もそうであるように、軽量級の悲哀は今も健在のようだ。ただ近年は体重別選手権もあるみたいで、03年には75Kg級未満の部で学生チャンピオンも輩出している。
 現在の部員数、部員募集の謳い文句である”初心者大歓迎”、”体重不問”ということから見ても、作品との違和感は全然ない。

 要はおよそ相撲などしそうにないひ弱なタイプの人間が、体育会相撲部として大会に出場して、”柔よく剛を制す”を寄る辺に活動している素人集団なのだ。そして、この作品のオックスフォード大学の留学生で相撲部員になった人間に、クリスチャン系のお坊ちゃん大学の学生が、クリスチャンとは異質な神棚が飾ってある稽古場で相撲をとることに対して、「日本人は本質がわかってない」と言わしめることが、この作品の肝と言えるのだ。
 クリスチャン系のお坊ちゃん大学の学生が、伝統と格式にがんじがらめにされた、いわばスポーツと呼ぶには若干おこがましい格闘技に傾注していく姿が、傍から見ると滑稽極まりないのだが、本人たちは真剣極まりないというコントラストが逆に滑稽なのだ。

 さて、周防の原点はどこに?それは、普通のしがないサラリーマンがダンススクールに通うとか、失業して失意のどん底の青年が痴漢の冤罪で法廷に立つとか、という”絶妙なねじれ”と言いたいところだが、僕としては、あの「終の信託」でのオペラ「私とお父さん」のベッキョ橋のエピソードが、ジョン・コクトーが訳者の堀口大学に連れられて行った国技館のエピソードと重なり合って、脚本家周防義行の知性のお遊戯が、彼の原点かなあ、と思えてくるのである。
 
「力士達は、桃色の若い巨人で、シックスティーン礼拝堂の天井画から抜け出してきたような、類稀な人種のよに思える。・・・相撲の立合いはバランスの奇跡だ」。ジョン・コクトーは相撲の力士をそう批評する。
 
 相撲と立教大学とジョン・コクトー。まるで何の関連もない三つの言葉をつなぎ合せてひとつの話に仕立て上げる”三題話”の妙味が、周防作品の原点である知性のお遊戯なのだ、というオチにしておこう。

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