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ひかりごけ (1992)

監督
熊井啓
  • みたいムービー 23
  • みたログ 86

3.48 / 評価:21件

後半突然シュールになります。

  • tor***** さん
  • 2011年2月14日 17時12分
  • 閲覧数 3081
  • 役立ち度 1
    • 総合評価
    • ★★★★★

遭難したシーンでは、
寒さと、飢えで、乗組員が順に死んでいき、一種の葬儀(氷柱に囲まれて)を行う様子を比較的クールに描いています。
船長の発案でその死体の肉を食らうシーンも「おどおどろしい」というよりも、極限状態に置かれつつも「一見冷静である船長」と「混乱する乗組員」との対比が実にクリアな感じがするため、人食いのシーンは何かの儀式のように見えました。
それは、例えば「人肉」を何度も何度も噛み砕いて飲み込む船長と、「噛む」というより「ただ飲み込む」隊員の姿の対比です。
そして、死んでいく隊員と、その死体を食料にして「生きよう」とする冷徹な船長が描かれていきます。
ただ、この「冷徹さ」は「極限状態」のなかで人間が示しうる行動のひとつであり、悪行でもなんでもないのだと言っているようでした。
その姿を見事に演じたのは名優、三国さんならではだと思います。
人肉をもぐもぐやってるときの眼がものすご怖い!人間の眼じゃない気さえする。

そして、後半。
人食いがバレ、法廷に引き出されるのですが、終始沈黙していた「船長」に答弁を求めるところから、いきなり「シュール」な舞台劇になっていきます。
少し唐突過ぎますので、違和感は否めません。
もちろん「シュール」ですから「答え」も示されません。

ただ、いくつか考えました。
「あなたは人の肉を食べたことはありますか?逆に人に食べられたことがありますが?」
「裁判を冒涜しているのではないです。ただ、その経験の無い人間が私の行動を裁くのを我慢しているのです。」
「私の光臨にヒカリゴケが見えるでしょう?人の肉を食べるとそうなるんです。私を良く見てください。」
ただでさえ、裁判所の風景が、検察、弁護士、裁判官の当時の格好もあいまって、まるで地獄の「閻魔大王」の裁きをうけているよに見える上に、死んだ3人の乗組員の亡霊が出てきます。そして法廷の背景が急に「遭難現場の洞窟」に変わるのです。

「自分のヒカリゴケ」を見てくれと叫ぶ船長の言葉があれど、誰にも見えませんでした。寧ろ、船長以外の裁判官や傍聴者の後ろに「ヒカリゴケ」がみえました。

多分、「ヒカリゴケ」は人間の原罪の象徴なのではないか。法廷に出るほどの罪ではないかもしれないが、当時の「侵略戦争」を支持していた国民全体が罪をしょっていいるはずです。殺人行為ですから。

だから、食された3人のうしろには「ヒカリゴケ」は見えないし、贖罪の気持ちを持ち、裁きを受けようとする船長の後ろにも見えなかったのではないでしょうか?

繰り返しますが、後半は、ちょっと難解な展開で、答えを出さぬまま終わりました。

ただ、ラストに校長先生が格子の向こうにあるヒカリゴケを作家と見るシーンがあらわれます。
それはまるで牢獄と世間を隔てているもの。あの世とこの世を対比しているかのようでした。光の輪を持たない五助・八蔵・西川の幻が残った洞窟が罪無き者達の世界なのかもしれません。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

  • 恐怖
  • 絶望的
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