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おろしや国酔夢譚 (1992)

監督
佐藤純彌
  • みたいムービー 17
  • みたログ 212

3.34 / 評価:64件

どこで生き、どう死ぬのか

  • とみいじょん さん
  • 4級
  • 2016年12月29日 2時22分
  • 閲覧数 1159
  • 役立ち度 2
    • 総合評価
    • ★★★★★

望まぬ体験を強いられた人々。
 「帰りたい」でも「こんなに年月が経ってしまっているのに、待っていてくれるのか」。
 もしかしたらの未来より今の選択。
 死後、野ざらしになる恐怖。ちゃんと埋葬されたい。キリスト教国ではキリスト教者以外は教会で受け入れてくれずに野ざらしになる。キリスト教者となれば、祖国では弾圧の対象となる時代。とはいえ生きて祖国に帰れる保証もない。究極の選択。
 それでも忘れられない故国。仲間の願い。
 皆で帰ろう。その想いが命を支えるも、月日が経つにつれて様々な想いが交錯する。
 そんな物狂おしいほどの想いが切ない。

一介の商人が、国の最高権力者に会う。直訴。当時の日本で行ったら死罪に充当する行為。それでものこの思い。この封建社会の中で、それが叶う、それ自体が奇跡。台詞で語られるように、大黒屋の人格が周りの人を動かして為し得たこと。
 と、頭では考えるが、映画の中では、苦労は語られるが、スムーズにことが進む印象が強くて、そこが★一つ減。でも、かかった年数を考えれば、ものすごい苦労があったのだろう。

海のこと、船のこと、外交、法律を知らぬ身には、勝手に船を作って帰っちゃえばいいじゃないという想いもぬぐえないが、そうもいかないのだろう。(映画ではそのあたりの説明は全くない。他の方には自明のことなんだろうと自分の無知を思い知る)

日本の引き取りも、史実に基づいているのだろうが、海岸で役人が数人いるだけで、「え?これだけ?」とゾンザイな扱いに見えた。だって、鎖国している日本にとったら、元寇が襲ってくるようなことでしょう?その後のペリー艦隊に対する対応と比べると、あれ?という感じ。

原作未読。あの井上靖さんの作品。かなり端折って映画化されたらしい。


それでも、役者の迫真迫る演技には胸を打たれる。芸達者と名高い人々をこれだけ揃えている映画としても見どころある。
 特に、緒形さんは、背筋も凍るような極悪人から、この映画のような人を魅了してやまない実直な人物まで演じきり、改めてすごい役者だと鳥肌がたつ。

そして、映像は迫力満載。これも、これだけでも見もの。


大黒屋光太夫。その生涯は色々な人の心を惹きつけ、井上靖さん以外の小説もあると聞く。
 映画のキャッチコピーは「ロシアで見たことは夢だったのかー」「鎖国の世に世界と出会った男がいたー大黒屋光太夫」「壮大な時空の中で男達は何を見たのか」
 映画では光太夫と生死を共にした仲間との顛末に心を揺さぶられるが、光太夫は回船(運輸船)の船頭親方でもあるからか、元々の性格からか、好奇心が強く、希望を捨てない。おろしやで見たこと学んだことを日本に持ち帰って、皆に知らせたい、役立たせたい。そんな思いにも溢れている。
 そんな大黒屋の想いに対する、異国での人々の温情。故国での政府の非情。やるせない。


1989年に冷戦の終結が宣言され、1991年にソ連が崩壊したとはいえ、昭和世代にはソ連はとっても遠い国。
 その、ソ連・ロシアでのロケ。まだ見ぬ憧れをかきたてられる歴史ロマン。
驚きと共に、その国民性にワクワクしながら鑑賞。

こんな風に、お互い利権・思惑はありつつも、こんな風に交流で来ていたら、戦争なんて起こらないのになあ。


ロシアの温かい人情・雄大で猛威をふるう自然。
シベリア鉄道でユーラシア大陸で駆け抜けたくなった。
自然を甘く見たらいけないと、肝に銘じつつ。

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