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遠き落日 (1992)

監督
神山征二郎
  • みたいムービー 17
  • みたログ 167

3.39 / 評価:41件

by 偽kamiyawar(知恵袋)

  • ese******** さん
  • 2019年4月6日 1時09分
  • 閲覧数 906
  • 役立ち度 2
    • 総合評価
    • ★★★★★

野口英世の魂を謳い上げた本物の名画ですね。

現代人の多くは、強い意志を人間がどのようにして得るのか、ということを分かっていない。
だから何かをやろうとしても続かず、自分がダメなのではないかと直ぐに落ち込む。
強い意志というのは、独立して存在しないものなんです。今の時代は強い意志とか、精神力を皆な欲しがるんだけど、そんなものは運動能力のようには養えないんですね。

しかし、歴史上には強い意志を持った人間はいる。在るのは事実なんだから、強い意志を欲しがるのであれば、そういう先人の研究をしなければいけないんです。
そうしなければ、何万回、何億回唱えたって無駄なんですよ。理解することと実践出来る事とは違うんです。本当に己のものとするには、深く潜って見出さないといけない。
こうやれば確実に出来るという確信になるまで潜ることなんです。

その強い意志を持った偉人の一人に本作の主人公・野口英世がいる。
この人は大変な貧乏人だったんですね。当時、貧乏であるということは、絶対に上の学校へ進学できないということを意味していたんです。“絶対” なんですよ。
頭の出来じゃないんです。裕福な家でなければ進学できない時代だったんです。
しかし彼は進学した。そればかりか国の援助でも無ければ絶対に行けないはずの海外留学までやった。
強い意志がそうしたのは間違いないんです。じゃあ、野口の強い意志はどうやって形成されたのか。

一般的な野口の伝記にはこう書いてある。
「野口英世は幼少期の火傷によって、全指の癒着という障害を負った。しかしある医師が外科手術によってそれを治療し、野口は医者を尊敬し、医学を志すようになった」

「あ、そうですか」で終わっちゃう話なんですよ。もしも、これが彼の強い意志の根源であったのなら、我々は何かの障害でも負って、それを治してでももらわない限り強い意志を持てない、ということになる。そんな特殊なものじゃないんです。
実はこの巷に流布している伝記本の多くは潜ってないんですね。野口の核心に全く迫っていない。
この映画の原作である渡辺淳一の『遠き落日』という野口英世の伝記があります。この伝記こそが野口英世の核心に迫っている。

その中では、野口は医者に尊敬なんか抱いてはいません。彼は自分のために命を削るように働き、面倒を見てくれた母親のシカを思っていたんですね。
いつも母親の手はあかぎれに覆われていた。それは貧しい暮らしを支えるために、真冬の湖に入ってシジミを獲っていたからなんです。仕事を選べない当時は、それが自分に出来る精一杯のことだったんですね。そういう母親の姿を見て野口は育った。
そして自分の手を治してくれた医者に、母親がこれ以上は無いというくらいに感謝した。

その姿を見て、野口は医者になれば母親が喜んでくれるのだ、ということを考えたんです。野口の人生は全て母親に捧げるものだったんです。
その愛情が強い意志を生んだんです。野口英世に宿っていたものではないんです。母への愛によって強い意志を抱かざるを得なかったんです。

それから猛勉強したことは確かですが、最大の難問である学費を得なければならなかった。で、彼はどうしたのか。金持ちに近付いて彼らを騙すようにして援助を受けていたんですよ。
汚いことは彼にも分かっていた。しかし、どうしても医者にならなければいけないのだから、自分が汚れたって関係無いんです。
アメリカに渡るために多額の借金をしたわけだけど、全部踏み倒してます。返そうとすれば研究が出来ないから当然なんですよ。

アメリカではほとんど寝ないで難関200本もの論文を書いた。そうしないと認められないからなんですね。当時の熱心な医学者が集まるロックフェラー研究所の中に於いてさえ、「ノグチはクレイジーだ」と言われた程なんです。
それも全て母親の為なんです。世界的に有名になれば母親が誇らしく思ってくれるから。

彼はアメリカ人の女性と結婚しますよね。
それは、あの時代では西洋人は雲の上の存在と思われていたから。日本人である自分が白人女性と結婚すれば母親がビックリして喜んでくれると思ったからなんですよ。
だから結婚の事実だけで、野口は妻を全然大事にしなかった。目的が違うんです。

今、彼の銅像がロックフェラー大学の図書館にあります。そこでは「病原体ハンター」とかつて持てはやされた彼の実績は全く褒められていない。彼の研究の実績は今では殆どが間違いであることが分かっているからです。
しかし、野口英世は人類史上類例の無いほど強い意志で人生を生きた人間であることは間違いありません。その意志の根源が母親に喜んで欲しい、というものであったから、他の人間に有用では無かっただけなんです。

しかし、私は彼が大好きです。一つの愛を貫いた彼の人生は本当に美しいと考えています。

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