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トキワ荘の青春 (1996)

監督
市川準
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2.94 / 評価:133件

市川監督の青春。

  • 晴雨堂ミカエル さん
  • 2008年9月23日 14時20分
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    • 総合評価
    • ★★★★★

 御存知の方も多いと思うが、日本の漫画史に燦然と輝く聖地みたいな所が、東京都豊島区椎名町(現在は町名が変わっている)にあった木造2階建のアパート「トキワ荘」である。たしか、私が高校2年生の頃に老朽化と家主の都合で取り壊された。

 最初に住んだのは手塚治虫氏である。昭和28年(1953年)頃か。続いて映画の主人公である「テラさん」こと寺田ヒロオ氏、続いて藤子不二雄の両氏・森安なおや氏・石森章太郎氏・赤塚不二夫氏・鈴木伸一氏・水野英子氏と入居していく。入居はしなかったが、毎日のように通っていた漫画家に、つのだじろう氏・永田竹丸氏・園山俊二氏、通う事は無かったが入居メンバーと交流のある松本零士氏、通うほどではなかったが訪問した事のある池田理代子氏、トキワ荘に殆ど関わりは無かったが憧憬を抱いていた矢口高雄氏、続々と現代日本の漫画文化を担う事になる若者たちが集まった。全盛期の昭和30年頃は2階の部屋が下積漫画家たちに占拠されている状態になった。(余談1)

 映画ではそんな時代の1コマを描写している。四畳半一間の個室、便所や台所は共同、風呂は無し。そこへ日本各地から漫画家を目指す若者たちが集う。クラブの合宿のような日々。藤子不二雄A氏の「まんが道」や「トキワ荘青春日記」、石森章太郎氏の「トキワ荘・春」では、記憶に残っているエピソードを面白おかしく楽しい日々に書き綴っているが、実際の日常は映画のような淡々とした風景に近いかもしれない。むしろ実際の日常のように魅せる映画というのが驚きだった。通常の映画は愛想の無い日常を劇的に表現するものなのに。

 青年時代のゲバラが南米を放浪したエピソードを描写する「モーターサイクル・ダイアリーズ」でも過度の脚色は避け「旅」の経験者が観ても納得する内容にしているが、この作品もそれに近い。市川監督はCM業界に入る前は画家を志し東京藝大受験に何度も挑戦して挫折を繰り返している。それが活きているのか?
 そういえば、実際のテラさんはトキワ荘のメンバーの中でも「成功組」で、早くも所帯を持ってトキワ荘から転居している。(と私は記憶しているが)日本漫画の流れに疑問を持ち漫画家を辞めてしまうのはもっと後の話なので、作中のテラさんは少しイメージが違う。市川監督自身の心情とたぶらせているのだろうか?(余談2)

 巨匠たちの青春時代ではなく、私たちも現在進行形で体験していく「青春」として観てほしい。この「青春」はノスタルジーではない。

(余談1)トキワ荘の仲間が同窓会的に当時の思い出を描いた漫画をよく読んだが、概ね共通しているのは手塚治虫氏は当時から「巨匠」で成熟した大人に描かれ、寺田ヒロオ氏は長身で柔道かラグビーでもやってそうな体格に描かれている事が多い。
 しかし、よく考えてみるとトキワ荘時代の手塚治虫氏はまだ20歳代の痩せた若造だった。寺田ヒロオ氏も元社会人野球の選手で筋肉質の体格ではあったが痩身の部類だ。だから作中の本木雅弘氏の線の細いテラさんぶりはむしろ実像に近いかもしれない。
 藤子不二雄両氏をはじめトキワ荘の面々が手塚治虫氏や寺田ヒロオ氏に抱くイメージが覗われる。

 永田竹丸氏の名前を聞いてピンとこない人が多いと思うが、藤子不二雄A氏と森安なおや氏とで遊び人三羽烏だった漫画家だ。50年代に大活躍し、スクリーントーンを漫画に導入した人でも知られている。
 少し私がビックリしたのは、トキワ荘の同窓会的な特集本で公然とテラさん批判をやっていたことだった。藤子不二雄A氏が少年時代からトキワ荘時代までを描いた伝記漫画「まんが道」では和気藹々とした楽しい日々のようだったが、人間関係でいろいろ摩擦もあったのだろう。難しいものだ。
 しかし、一癖も二癖もある「藝術家」たちのリーダーになる寺田ヒロオ氏と手塚治虫氏は、やはり凄いなぁ。私がリーダーを務めたらクレームの集中砲火を浴びるだろう。

 池田理代子氏がトキワ荘を訪問した時はまだ中学生の美少女。

(余談2)寺田ヒロオ氏の晩年は世俗との付き合いを断ち、独り離れに引き篭もり独りで最期を迎えたそうである。なぜ頑なな姿勢をとったのだろうか? 本人よりも家族が可哀想だ。トキワ荘の歳下の仲間の面倒を見ていた頃とは別人だ。

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