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夏時間の大人たち HAPPY-GO-LUCKY (1997)

監督
中島哲也
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3.72 / 評価:32件

中島哲也がおこす日本映画革命(その①)

  • 三級映画技士 さん
  • 2010年6月3日 20時43分
  • 閲覧数 662
  • 役立ち度 17
    • 総合評価
    • ★★★★★

DIRECTOR'S MAGAZINEにて中島監督は以下のような事をおっしゃっていました。

「輝かしい実績も、プライドも、技術さえも自身には邪魔なもの。変わらなければ、面白くない!」
(ネットより、一部改変)

この考えは彼の手がけるCM、映画などといった作品群にも大きく反映されているように思います。
YOU TUBE等で彼の手がけたCMを拝見しているとその事が良く分かります。

特に中島監督の初期のCM作品を観ると驚かされます。

永瀬正敏が出演する「J-PHONE」
フジッコ「つけもの百選」

等の特徴はCM自体が映画のように物語性に富んだ内容となっています。
また構成も比較的シンプルで現在の監督の特徴ともいえる映像的なインパクト、
装飾過多な表現は感じられません。

しかし99年度版「JRA」のCM、
そして中島監督CM史上最高傑作との呼び声高い00年「黒ラベル 温泉卓球編」、
辺りから後の「下妻物語」に通ずる中島監督らしさが垣間見れます。

なので個人的な意見としては99~00年にかけて中島監督は大きく変化したのだろうと考えます。
そう考えると本作「夏時間の大人たち」は監督の改変期以前の作家性を知る上で貴重な作品でした。


※    ※    ※


まず本作を鑑賞した結論から書いていきたいと思います。

今だからこそ中島監督は日本映画監督陣の中でも特異な立ち位置にいる監督ですが、
その根底には「映画」に対するしっかりとした「理解」と「情熱」がこの頃既に出来上がっていたのだと感じました。

物語は逆上がりが出来ない主人公のたかしの「何故」を描いた映画。
作中では彼が生活の中のあらゆる物事、あるいは自身の感情に疑問を抱く事こそがテーマの話です。


そんな様々な疑問の中で本作の主軸となるのが
「大人になるとはどういうこと?」という疑問です。


その事をたけしに諭す登場人物として2人の人物が登場します。

一人は学校の先生。この先生は大人になる事をいわゆる社会の常識で語ろうとする役柄です。

一人はたけしの父。父は子供時代をひきずり「大人も分からない事しちゃうんだ」とたけしに言う役柄です。

もっと単純に比較すると、

大人と子供は違うんだ!と説く先生
大人と子供は変わんないよ!と説く父ちゃん

そのような2つの考えが作中で対峙します。


そして本作の結論は後者に傾きます。

何故ならたけしはいつの間に逆上がりが出来たから。
何故なら父ちゃんも母ちゃんも子供の頃から地続きで
今もあらゆる「何故」を引きずりながら生きているからです。

そして巨乳派なたけしが何故貧乳のともこが好きなんだろうと疑問を持った時、たけしはまた一つ大人の階段を上がります。

大人になるという事は「何故」の積み重ねである事、
そこにはゴールが無い事を本作は教えてくれるのです。


※    ※    ※


個人的には小品ながらも中島監督らしい個性も垣間見る事が出来、
また今の中島監督があまり表には出さない表現方法も観る事が出来ました。

まず現在の中島監督の作風と大きく違うのはカメラワークだと思います。

単純にカメラワークというものを「映画的」「テレビ的」に大別したとすると、
初期中島監督の作風の方がより「映画的」であるように感じました。

遠巻きで、しかも中心から少しずらした所に登場人物を配した草原のシーンがあるかと思えば、
古い家屋に少女が座り込むシーンはシンメトリーだったりと、

地味なんだけど、しっかりとその場の情景で、
美しいシーンを押さえている印象を受けました。

今の中島監督の画とはまた違う面白さがあります。


と思えば一方で、鉄塔追尾今の作家性と変わっていない部分も感じられます。
それは観客を映像で「あっといわせてやろう」という突飛性。

本作の要所要所に入るたけしの妄想は
正にそういった中島監督らしさを感じる事の出来るシーンでした。

またCCガールズの巨乳で始まる導入部はインパクト大ですw

あえて苦言を書くと物語の本筋を解説で済ませてしまうのは、
中島監督の常套手段とはいえ不満が残りました。


※    ※    ※


最後に

本作は中島監督がデビュー作から既に一味違った監督だった事を感じられる作品でした。
私が思う監督の作家性とは端的に言うと「お客さんを映画で驚かせる」という作家性。

監督の好きな映画にデヴィッド・リンチ「マルホランド・ドライブ」がありますが、
あの作品も映画による驚きと発見に満ちた作品でした。

中島監督の作品も同様に驚きと発見に満ちています。

それが吉と出る事も凶と出る事もあるのですが、
少なくとも私は日本では特異と言わざる終えない
彼の作家性に惹かれずにはいらないのです。

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