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デッドロック

デッドロック

FOOTSTEPS IN THE FOG

90

rup********

4.0

ネタバレ策士策に溺れる

これ長い間観たかったんですよね。日本版のソフトが出たのでようやく鑑賞することができました。 当時実生活で夫婦だったスチュアート・グレンジャーとジーン・シモンズが共演した犯罪映画で、この2人が共に腹黒い一面を見せて最後まで互いにやり合うのかと思って観ていましたが、後半になると、違った方向へ物語が展開していってしまいます。 監督はプログラムピクチャーを数多く手掛けているアーサー・ルービンで、あまり特徴が感じられない演出。 20世紀初頭のロンドンが舞台なのでクラシカルな雰囲気が出ているのが魅力です。 大きな屋敷の主スティーブン(グレンジャー)が妻を毒殺した証拠を握った女中のリリー(シモンズ)が、スティーブンに圧力をかけて召使い頭に取り立ててもらうように仕向けるといった前半の展開は野心満々の女性の成り上がり物語を観るような雰囲気が出ていていいのですが、リリーが亡き妻の後釜になろうとする素振りを見せ始めたため、スティーブンが彼女の存在を邪魔に感じて、霧の深い闇夜にまぎれて彼女を殺そうとし、勘違いで全くの他人を手にかけてしまうあたりから、ピンと来なくなってしまいます。 というのも、リリーがスティーブンに本気で恋をしてしまうからなんですね。殺人のターゲットが自分であったことを知っても、彼女の心は揺らぎません。 殺しの証拠を掴んで主人を手玉に取るほど肝の据わった女性が、自分を殺そうとした男に対してそう簡単に心を許すとは思えないんですが、リリーはスティーブンを純粋に愛してしまう。 そして、終盤には狡猾なスティーブンが再びリリーを厄介払いしようと考えるのですが、その企みがリスキーなことをやりすぎていて、珍妙な印象を受けてしまいます。 イギリス的なブラックユーモアを利かせた皮肉な幕切れともいえるものなんですけど、かなり間が抜けて見えてしまいました。 もっとも、リリーが天然系ファム・ファタールだと考えると面白いのかもしれませんが・・・。 グレンジャーは、端正な顔立ちを逆手にとって、結構不気味な雰囲気を醸し出しています。 シモンズは、後半にかけて恋する乙女になってしまうのが物足りない気はするものの、ロンドンの下町訛りの台詞回しが上手くて、健気で愛らしい感じがしますし、前に観た「悲恋の王女エリザベス」よりも楽しめる夫婦共演でした。 また、本作には、スティーブンのことを好きになる実業家の娘エリザベス役でベリンダ・リーが出ているのも注目点です。 まだ25才の若さで、自動車事故で早逝した人ですが、イタリアの女優さんのように目鼻立ちのはっきりした美人女優で、本作でも思わず目を惹かれてしまいました。 昔NHK-BSの放送で観た「少年が知っている!」では、宝石強盗の恋人役を演っていて、ラストシーンの姿がとても切なかったのが記憶に残っています。

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