狐も虎も “あの人”と呼ぶのね!
- bakeneko さん
- 2017年10月10日 19時47分
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1923年に「デルス・ウザラ」という題名で出版されたロシア人探検家ウラディミール・アルセーニエフによる、1902年~10年のシベリア沿海地方シホテ・アリン地方の探検とガイドとの友情の記録に基づいて、黒澤明がソ連のスタッフを用いて映像化した作品で、探検当時はゴリドと呼ばれたツングース系の民族:ナナイの猟師:デルス・ウザーラの素朴で自然に根ざした生き方の中に現代人が失った“人間の純粋さ”を浮かび上がらせています。
世俗&消費社会に毒されず、自然の中で素朴な生活を送る自由人への憧れ―「自由を我らに」、「素晴らしき放浪者」、「クリクリのいた夏」、
ロシアの過酷な大自然で生きてゆく者―ツルゲーネフの短編を映画化した「猟人日記 狼」
時代の変遷に着いてゆけなかった愛すべき旧世代の消滅―「砂漠の流れ者/ケーブル・ホーグのバラード」「ロイ・ビーン」
自然の中で生きてゆく者の知恵とスキル―「チャトズランド」
そして黒澤のヒューマニズム作品として―「どですかでん」、「どん底」、「生きる」
…を想起させ、自由に生きる素朴なこころへの郷愁を謳っている作品で、デルスの愛すべきキャラクターは「男はつらいよ」の寅次郎や「僕の叔父さん」のユロ氏といった自由人とも通じるものがあります。
シベリアの大自然と一体となって生きているデルスの活躍と文明に溶け込めない気質に、急速な機械化と商業主義の発達で現代人が無くしてしまったものを浮かび上がらせていく作劇となっていて、豊かなシベリアの自然描写と終盤の街の家での窮屈な生活の対比は、当時映画が思うように撮れなかった黒澤自身を反映しているとも観ることができます。
ロシアの大地の雄大さと自然、そして人間の純粋さが胸に沁みる名作で、日本の縄文人と同じ祖先を持つデルス・ウザーラ:マクシム・ムンズクは、ちょっと千秋実に似ていますよ!
ねたばれ?
1、 当初アルセーニエフ:三船敏郎、ウザーラ:志村喬という配役案や、ウザーラを三船が演じる可能性もあったそうです。
2、 黒澤の弟子を自認するニキータ・ミハルコフが本作に感動してオマージュを捧げているのが「ウルガ」、ジョージ・ルーカスがデルスを宇宙人にして甦らせたのが「スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』、『イウォーク・アドベンチャー』、『エンドア/魔空の妖精」などに登場するイウォーク(Ewok)族です。
3、 (それでは皆さん御一緒に)
“新式のライフルをあげるよりも、眼鏡を創ってやれば良かったのに!”
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