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天はすべて許し給う

天はすべて許し給う

ALL THAT HEAVEN ALLOWS

89

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5.0

よろめかない未亡人

1955年。ダグラス・サーク監督。前年の「心のともしび」につづいてロック・ハドソンとジェーン・ワイマンを使ったメロドラマ。大学生の息子と娘がいる未亡人の恋のゆくえが冒頭の紅葉の季節から最後の雪の季節まで、すばらしい音楽に乗って描かれます。正直にいってもはや若くないジェーン・ワイマンの、最初からわかりきった結末なのに感動してしまう大人の映画です。 ある程度成功した夫を持っていた未亡人の恋の相手として、年上の落ち着いた男(情熱なし)、お遊びで関係を迫る男(酔っ払い)、階級差のある庭師だが信念をもつ若い男(ソロー的)が現れる。冒頭から彼女の思いは若い男にあることは一目瞭然なのですが、階級差、年齢差、世間の噂でとまどう彼女が、一端は男に身を任せながらも子ども達の抵抗であきらめるが、男のけがをきっかけに結ばれる。その結ばれるシーンなどを効果音ばっちりで盛り上げるわけでもなく淡々としずかに描くなめらかな展開がたまりません。日本だったら間違いなく「よろめき」(理性を失ってもうどうにでもなれ。by三島由紀夫)になってしまうところ、最後まで意志的で我を失わない。だからといって感情の振幅を抑圧するわけではなく熱情を隠さない。冷静に燃え上がる愛。カメラも無闇によったりひいたりせず端正に対象をとらえています。 未亡人の娘が俗流フロイト学説で男女の関係を解説したり、未亡人を苦しめる男たちの表情が影でまっくろになったりとわかりやすい。しかしまったく俗っぽくはなっていない上質なメロドラマです。

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