ここから本文です

童年往事/時の流れ (1985)

童年往事

監督
ホウ・シャオシェン
  • みたいムービー 21
  • みたログ 60

4.33 / 評価:21件

コミュニティの中心にある木

  • bu_******** さん
  • 2014年9月10日 21時46分
  • 閲覧数 779
  • 役立ち度 0
    • 総合評価
    • ★★★★★

侯孝賢については小津安二郎になぞらえて評されることが多いが、家族ひとりひとりの生き方を描くという点では共通点が多い。事件とも言えないような出来事を淡々と静かに描く点でもよく似ている。そして日本家屋での室内シーンの美しさという点でも共通している。さらに自然描写の美しさだ。たとえば「悲情城市」での九份のあたりから基隆の方を見下ろす山道の場面、「川の流れに草は青々」における田んぼの畦道を歩いていくシーン、いずれも瞼に焼き付いて離れない。

 この映画「童年往事」では木が印象的だ。主人公の家の近くの大きな木。冒頭では主人公の阿孝が宝物を根元に埋めるが、その木は映画の中にたびたび登場する。村の人たち、町の人たちが集うのも大きな木の根元だ。阿孝が級友たちとたむろしている中心にも大きな木がある。実際、台湾の町や村では大きな木の下に人々が集まってお茶を飲んだり、話をしたりくつろいでいる風景をよく見かける。コミュニティの中心には木がある。この映画における木の役割は家庭と社会との境界だ。木の描写によって家族の問題が社会の問題へとつながっていく。家族の問題が単に個人の問題として完結しているのではなく社会とも深く結びついていることを木は伝えてくれる。

 日本人、特にある程度の年齢以上の日本人は、この映画を別の観点から楽しむことができる。この映画で描かれる台湾は1950年代と1960年代だが、そこに映し出される光景は日本の昭和30年以前の日本のそれと似通っている。台湾の年輩の人たちと同様に、日本の人々もこの映画に懐かしさを感じることができるだろう。また、この阿孝の家族の持つ価値観もある時代までの日本のそれと同じである。家族の転居のために一流の進学校への進学をあきらめた長女。そして、彼女はまた弟のために大学進学をも諦めて嫁に行くのだ。しかし、その祖母は女には裁縫と料理ができればいいと堅く信じている。そしてまたその母も自分のキャリアを家庭のために犠牲にした過去をもっていたのだ。  台湾の女たちの抱えていた葛藤、それはとりもなおさず日本の女性が抱えていた問題でもある。台湾の家族の問題は日本の家庭の課題でもあった。それは現代では少子化という形で別の局面を迎えているが、その問題は他の多くのアジアの国々でもいまだに克服できずにいる。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

  • 泣ける
  • 知的
  • 切ない
このレビューは役に立ちましたか?
利用規約に違反している投稿を見つけたら、次のボタンから報告できます。 違反報告
本文はここま>
でです このページの先頭へ