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東風

東風

LE VENT D'EST/VENTO DELL'EST/WIND FROM THE EAST

100

dor********

2.0

東風も夢のあと

シガ・ヴェルトフ集団時代のゴダールにはそれほど興味は無かったのだが、たまたま近所のレンタルビデオショップに置いてあったので、借りてみた。 感想。ものすっごいチープな映画。正直言って、少なからず幻滅を感じた。ゴダールほどの天才が、高校生が文化祭のために作ったような映画を作ってしまうのか、と。しかし、もともと非商業映画なので文句は言えない。借りた私が悪いのだ。 「階級闘争」だの「修正主義者に死を!」だの、なにやら不穏な言葉が並べられていて困ってしまうが、そもそも非商業的政治映画なのだから文句は言えない。借りた私が悪いのだ。それでも、原色のペンキをぶっかけたり、フィルムにキズをつけたりと、ゴダールらしいところもあって、なかなか楽しめるが、無理に作家性を出そうとしているようで少々見苦しいのも事実。もっとも、ゴダールひとりがこの映画をつくったわけではないので、文句は言えない。借りた私が悪いのだ。 政治思想には全く共感できなかったが、ゴダールの映画論・映画史論は興味深かった。政治思想的な語彙を借りてはいるが、ゴダールのテーマはほぼ一貫している。むしろ、『映画史』なんかよりよっぽどストレートに語られていて、分かりやすい。ようは、ゴダールの映画は初めから反抗的かつ実践的・闘争的であったということだ。 「社会派映画」と呼ばれる作品やドキュメンタリー映画が、現実を伝えるだけで実践的な行動に結びつかないただの娯楽映画であるという指摘は今日でも通用するだろう。アメリカ流の映画が、似たり寄ったりの「夢」を大量生産して、現実より本当らしいスクリーン内の世界に観客を「誘惑」しているという指摘も、やはり全く乗り越えられていない。映画が単なる娯楽以上のものと信じる者にとっては、速やかに乗り越えられなければならない壁であるにもかかわらず。 しかし、だからといって、ゴダールがこの映画でやって見せたような、煽動的で具体的方法を示した映画が正しいのかといわれれば、それも違うと私は思う。ではどうすればいいのか。はっきり言って、全く分からないのだが、たぶん、ゴダール自身にも答えが見つからないからこそ、いまだに映画を作り続けているのだろう。

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