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ゴッド・アンド・モンスター

aki********

3.0

モンスターはどこにいる?

タイトルは「フランケンシュタインの花嫁」の台詞からの引用ですが、原題は"gods and monsters"と複数形になっていることに注目が必要です。つまりここでいうゴッドは一神教であるキリスト教の神ではないし、モンスターもフランケンシュタインという一個体を特定するものではなくもっと広い意味で使われています。 実は微妙に失敗した作品じゃないかなと私は思います。「知識階級のゲイ老人」というセルフ・パロディーみたいな役をマッケランは大熱演していますが、それが過剰に見えてしまって映画的な演出としてコントロールしきれていないように感じます。 「唯一のモンスターはここにいる The only monsters are here.」とジム・ホエールは自分の額を指しますが、嵐の夜にたしかにそこからそれは現れます。けれどもあまりにそれは唐突で違和感があります。シナリオ上はその前に「今夜の空気はモンスターで満たされている The air itself is filled with monsters.」という台詞があり、伏線は張られているのですが、にもかかわらず唐突に感じられるのはあまりにホエールが豹変してしまうからで、演出がうまくないように思います。少しずつおかしくなっていって遂に大爆発というもっとわかりやすいニュアンスがほしいところです。 それはときどき挿入されるフラッシュバック・シーンにも言えることで、ホエールの意識の混濁を表すものだとしても、映画の展開の中で座りがよくありません。 インタビューが楽しみなのに「ああ、そうだったな。忘れていたよ」とか、自分の映画の放映があると聞いて「別の作品の方が傑作なのに」とか、うれしいくせに素直に喜びを表さない偏屈な性格は、本心を明かさない彼の人格の基本トーンです。そのために孤独がつきまとう彼の姿は、友達を求めるフランケンシュタインというモンスターのキャラクターともオーバーラップします。 父のことが本当は好きだったのに憎んだり、戦友の死が哀しいのにジョークにしたり、そんなことを繰り返して年をとり、そして庭師と築いた友情も内なるモンスターの発露でオジャンにしてしまう。「やはりこうなったか So it is going to happen after all.」いやそれをつぶやきたいのは観客のほうです。哀しすぎて感情移入ができませんでした。

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