レビュー一覧に戻る
グリーンマイル

グリーンマイル

THE GREEN MILE

188

nis********

5.0

ネタバレby 偽kamiyawar(知恵袋)

多くの人の疑問ということだけど、 (1)コーフィは何故弁明をせず死を選んだのか? については簡単で、要はコーフィが大事な人間を救えなかった、という深い悲しみなんだよな。 人を癒す奇跡の力があるわけじゃない。しかし、その力を最も発揮しなければならなかった時に出来なかったんだよ。その自責、後悔の念から、彼は一切の弁明をせず、死を受け入れたかったんだよな。 自分の奇跡の力なんて何の価値も無いことを知っていたんだよ。自分がせねばならない時に出来なかったんだからな。だから「贖い」なんだよ。 解る人にはポールが聖ロンギヌスだというのは解ると思うけど、あれはキリストを殺したロンギヌスの逸話をなぞっているよな。 しかし、なぞっているということで、同じものではないんだな。 この物語は、実は現代文明の怖ろしい悲しみなんだよ。 現代では「科学」が神なんだな。「キリスト」ではないんだ。みんな科学教の教徒なんだよ。 だからキリストをなぞらえたコーフィという男は、実は『科学の神の象徴』なんだよ。 現代の神の子なのな。言いたいことが伝わってるか? だからコーフィにはキリストにある威厳が無いんだよ。キリストの形だけをなぞっているんだ。あれはキリストでは無い。現代におけるキリスト的な存在と解するのが正しい。 科学が万能で、最も正しく真理であると、皆が思い込んでいるのが現代よ。 しかしどうだ。何でも叶えてくれるはずの科学はそうじゃないだろう。 最も肝心なものが救えないものなんだよ。だから科学の神であるコーフィは悲しいんだよ。 グリーンマイルというのは、死刑囚が最後に歩く道なわけだけど、つまり人間が全て死に向かう者だ、ということを示しているな。 しかし『科学』は、その道を遠ざけてしまうんだ。死すべき定めの人間に、死が「悪い」ことのように教えているものなんだよ。 だから科学の神によって死を遠ざけられたポールは苦しむんだな。 そして、(2)長寿とはなにか という疑問だが、長寿か短命かは人生でどうでもいいことなんだ。 しかし「死ぬことが悪い」ことであると思い込むことが悪なんだよ。死を遠ざけることは、実は怖ろしいことなんだな。だから「罰」だとポールは言っているんだ。 大事な人間の死を受け入れられるのは、自分もまた死すべき定めにある者だからなんだよ。しかし自分が死なない者であれば、もう喪う悲しみは壮絶なものとなるのな。 長生きが悪いことじゃないんだ。死を遠ざけたいと思う心が悪いんだよ。 まあ、現代人は長く生きたいと思ってるじゃない。そこじゃないんだよな。人生って「躍動」にこそ価値があるんだから。 で、その躍動は自分が死ぬ者だと分かってないと出来ないものなんだよ。 ここは、本当にそう思わないと分からんよ。 私なんかは子供の頃に突きつけられた人間だから、簡単にわかるんだよ。 いろんな機械につながれて、「ピコン、ピコン」なんて表示されちゃってさぁ。それで親戚が集まってるんだから。 そうするともう、助かったと思った瞬間におばさんのスカートでもまくらないといられないのな。 私は何度も「メメント・モリ」の話は書いているけど、でも本当に分からないと分からんよ。 死を想うから躍動するのが人間なのな。 だから、ポールは躍動できない罰を与えられているんだよ。 聖書では人類で最初の殺人を犯したカインは、その罰として殺されない者とされたんだな。 つまりポールはロンギヌスをなぞりながら、実はカインもなぞっているんだよ。 現代人にはロンギヌスなんだよな。しかし実際にはカインなの。そしてカインというのは農耕を始めた始祖であり、また殺人を犯してからは武器を作る始祖となったのな。 つまり人類が文明を持ち、またそれを発展させる者としての象徴なんだな。だから科学文明を享受する全ての現代人のことなんだよ。 そしてポールの最後のセリフだ。 「我々はいつか死ぬ。しかし、その間に何人もの友人の死を見ていかなくてはならない。無実と知りながら、処刑してしまった罰を私は受けているのだ。神よ、私にはグリーンマイルがあまりにも長く感じるのです。」 ポールは助けたんだよ。死なせてやったんだから。あれは介錯なんだな。 苦しまねばならん、死なねばならんことを「力」によって免れたからなんだよ。 まあ、作品としては台詞の通りだよ。片や死を、片や不死を、というな。無実の人間を殺しながら、自分は生きてしまっている。肉体の苦痛を逃れた代わりに、罪の意識を持ちながら生きねばならない苦痛を得た、ということだな。 だけどそれは「間違った生」ということなんだから、本質としては神に与えられた生では無い、ということになるんだ。 だからコーフィの力は「神の力では無い」ということになるわけ。じゃあ何かと言えば、人間の作った力、つまり「現代科学の象徴」である、ということを私は言っているんだよ。

閲覧数4,505