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ドラゴンロード

ドラゴンロード

龍少爺/DRAGON LORD

95

xi_********

3.0

80年代絶頂期前夜の意欲作

先日『ヤング・マスター 師弟出馬』のレビューをしたので、その流れでこの『ドラゴンロード』です。 元々は『ヤング・マスター 師弟出馬』の続編(仮題『恋するヤング・マスター』)として企画された映画でしたが、結局はジャッキー・チェンとレイモンド・チョウ(当時所属していたゴールデン・ハーヴェストの社長)の意向により方向転換。カンフー映画からの脱却を目指すジャッキーの意欲が漲る、実に愉快なスポーツ要素込みのアクション映画に仕上がっています。 ドラゴン(ジャッキー・チェン)は地主の放蕩息子。使用人たちを抱き込み、厳格な父親(田豊)の目を盗んでは、カンフーの修行をサボり、勉学はそっちのけ、毎日悪友の阿牛(マース)と遊び呆けている。ある日、街中で見かけた美女(シドニー・チャン)に一目惚れ。彼女への想いを記した恋文を凧につけて飛ばすが、風にあおられた凧はあらぬ屋敷に落ちてしまう。ドラゴンは恋文を取り戻そうと屋根に上るが、その屋敷ではキム(ウォン・インシック)率いる窃盗団が国宝を売却しようと計画を進めていたことで、ドラゴンは彼らに追われる羽目になる。 一部端折ってますけど、あらすじは大体こんな感じ。 多分、この部分は、元々構想されていた『恋するヤング・マスター』の脚本の名残りです。本作にはこの本筋とは別に、羽根突きサッカーやラグビーもどきのシーンが登場するんですが、そちらが本来は準備されていなかった改変部分でしょう。 正直な話、このスポーツ・シーンはとってつけたような印象もあって、映画としては相当チグハグ。当時観た日本公開版だと編集が違うのでまだ消化出来るんですが、これからこの映画をご覧になる方の多くは、諸般の事情により中華圏公開版の編集で観ることになるせいで、エンディングでは100%蛇足感を味わうことになると思われます(日本公開版ではこのエンディングがオープニングにくる)。 私も5~6年前にリマスター版のDVDを買ったら編集が違ったので驚きました。 それでも、この映画はジャッキーのキャリアを語る上では大事な一作です。 『ヤング・マスター 師弟出馬』は、レビューにも書きましたが、ジャッキーにとって最後のカンフー映画でした(『酔拳2』は例外です)。本作で当初は続編と企画されながらも変更に至ったのは、そしてそこからスポーツ要素を取り入れたのには、多分、ジャッキーがどうしてもカンフー映画を撮りたくなかったからだと想像出来ます。 そのため、本作でのジャッキーはカンフーが出来ないキャラクターとなっています。 その代わりに敵役のウォン・インシックが、それは見事なテコンドー仕込みの蹴り技を披露してくれるのですが、ここでジャッキーとマースはカンフーで対抗するのではなく、スポーツ仕込みの体力(と言う設定)で身体ごとぶつかっていく肉弾アクションを展開していくことになります(そのせいでウォン・インシックは悲惨なほど壮絶なアクションをやらされることに。ある意味この映画最大の功労者と言えますね)。 本来のクライマックスである倉庫内の大激闘は、明らかに『ヤング・マスター 師弟出馬』以前のそれとはスタイルが違い、様々なスタントを取り入れた、今日のジャッキー・アクションの原型と言えるものです。単純に振付のスピードが違うし、カンフーの型が完全に消滅しています。そこには、次作『プロジェクトA』での飛躍を想像させるに十分なパワーが漲っていると言っても過言ではない。 それに、後の成家班(ジャッキー・スタントチーム)の担い手となるマースやタイポーたち(ジャッキー・ファンなら解るでしょう)が、それなりの役として登場する初めての映画でもあります。 『ドラゴンロード』は、純粋に映画としては紆余曲折の製作経緯もあって褒められたものでありませんが、今日まで続くジャッキー・アクションの雛形としては評価されるべき映画だと思っています。 『ヤング・マスター 師弟出馬』と続けて観ると、その違いに誰でも気付くことになるはず。さらに続けて『プロジェクトA』を観れば、私の言っていることが何となく理解して頂けるのではないでしょうか。 この映画を劇場で観た当時、私はもの凄く興奮していたとのこと(母親談)。 自分でも、それまでのカンフー映画とは違う興奮を味わったのは覚えています。 そう。 それは、“ジャッキー・チェンのアクション映画”に初めて出会ったことによる衝撃だったのです。

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