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トラ・トラ・トラ! (1970)

TORA! TORA! TORA!

監督
リチャード・フライシャー
舛田利雄
深作欣二
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3.95 / 評価:278件

これが戦争だ!

  • カナボン さん
  • 2010年8月17日 22時52分
  • 役立ち度 25
    • 総合評価
    • ★★★★★

お盆の季節となるとやはり戦争映画が観たくなります。人類の最も愚かな行為といえる“戦争”。何故、あんなバカをやってきて、未だにあちこちで続けているのか。

今日のお題目は「トラ トラ トラ!」です。

「史上最大の作戦」、「パットン大戦車軍団」と並んで不朽の戦争スペクタクル超大作として君臨し続ける本作。中でも我々日本国民にとっては最も身近な太平洋戦争の発端ともなった真珠湾攻撃を史実に忠実に描いた作品と言う事で馴染みが深いでしょう。

以前にも書きましたが、戦争スペクタクルの基本的構造は善悪の明確化です。言うまでもなく第二次世界大戦における善玉はアメリカを中心とする連合国軍。対する悪玉はドイツであり、また日本という図式。

勝てば官軍とはよくいったものです。戦争は必要悪などと軽々しく口に出来るのは勝利国であるが故。基本的にハリウッドで数多く作られた戦争スペクタクルものの殆どが名作として今日まで語り継がれているのは、こうした背景があるからなのです。

ドイツや日本にとってこうした映画の数々、内心微妙なのはいたしかたない。そんな戦争スペクタクルの中で、本作は極めて異例な存在といえるでしょう。

近年「パールハーバー」という映画がありました。CG全開で尻が痒くなるようなロマンスを盛り込んだこの映画、完璧なエンターテイメント作品です。だが戦争によって全てを失った人からすれば、このような映画、決して許されるものではありません。戦争の悲劇をエンターテイメントの題材に用いるなどもっての外ということ。

それと同時にこのような映画、完全に見下した一方からの視点で描かれていることに腹が立つ。日本軍からの見方など全く無視しているわけです。この映画の素晴らしい点は日米双方からこの歴史的大事件を再現していることに外なりません。

「史上最大の作戦」のプロデューサー、ダリル・F・ザナックが偏った独りよがりの映画にしないように、この映画は日米の名匠3人によって作らせました。SF映画の金字塔「ミクロの決死圏」のリチャード・フライシャー、そして我が国の舛田利雄、深作欣二。その実現によって日米双方から客観的に見た真の真珠湾が再現されました。

初期の必殺シリーズで貫録たっぷりに元締を演じた山村聡が連合艦隊総司令官山本五十六に扮し、米軍司令長官キンメルをマーチン・バルサムがこれまた重厚に演じています。その他、ジョセフ・コットン、E・G・マーシャル、ジェイソン・ロバーツ、田村高廣、東野英治郎、三橋達也など日米の往年の名優たちが揃い踏み。

この映画、約3分の2は緻密に計画を練り、作戦を遂行していく日本軍の描写とのほほんと構えてアホ丸出しのアメリカ軍の描写に終始します。実のところこの導入部が長くて面白くないかも知れません。でも出撃前に神棚に一礼をして出陣する日本兵の壮絶な覚悟の表情や、この奇襲の脅威を重大と受け止めているほんの一握りの米国側の焦りなど、運命の時刻が迫ってくるに連れ、ドキドキ感が大きくなってくる。

そして満を持してアカデミー特殊視覚効果賞を受賞した世紀の空爆シーンに突入します。もうこのシーンの凄さは実際ご覧になった方しかおわかりいただけないでしょう。全てがリアルでもの凄い迫力、このシーンを見れば如何に「パールハーバー」が金に物を言わせただけの小手先の誤魔化しに過ぎないかわかる筈。

「トラ トラ トラ!」とは真珠湾奇襲に成功せりという日本軍の暗号です。その題名どおり、この映画はパールハーバーを完膚なきまでに叩きのめす日本軍の攻撃を描いたもの。1941年12月8日、この運命の日を持って太平洋戦争は動き始める。本作において米軍はヤラレ役一辺倒です。でもこの映画は日本軍の奇襲成功をただ描いた作品ではない。

その意味を象徴するのがラストの山本五十六の苦渋に満ちた表情。彼の思惑は米軍空母を撃沈させ、米軍の戦闘意欲を根こそぎ奪い取ることでした。しかし真珠湾に彼の標的は存在しなかった。皮肉にも山本艦隊司令の狙いとは反対に眠れる巨人を起こしてしまうという結果になる。超大国アメリカとちっぽけな島国日本、この先の悲劇への引き鉄を引いてしまった山本の心情、慮って余りある。

更にアメリカ側のしたたかさ。対外的にも対内的にも、奇襲攻撃を仕掛けた日本を徹底的に悪者にする時間的な工作。戦争を単なる殺し合いとせずに、その痛手さえも利用する卑屈さ。自分たちが正義であるとアピールし、4年後の広島長崎の悲劇を正当化さえしていく。

「正義は必ず勝つ」、これは真っ赤なウソ。「勝者が正義で敗者は悪」、このことこそが真理。
これが戦争というものなのです。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

  • スペクタクル
  • 知的
  • 絶望的
  • 切ない
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