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ドリアン・グレイの肖像

ドリアン・グレイの肖像

THE PICTURE OF DORIAN GRAY

110

shoko

4.0

ネタバレものごとは移り変わってこそ自然

なぜ1945年製作のこんな古い白黒映画を見る気になったかというと、同じ題名の映画がベン・バーンズ、コリン・ファース出演で2009年に作られていまして、その作品を見る前にこちらも見ておこうと思ったからなんです。 この2009年の映画は、なんと日本では未だに公開が未定なようですが、ベン・バーンズは「ナルニア国シリーズ」のカスピアン王子、コリン・ファースはアカデミー賞ノミネート作品の「英国王のスピーチ」のジョージ6世と、どちらも今をときめくメジャー映画の花形だから、こんな悪魔的・背徳的な作品とかちあわせるわけにはいかず、わざと時期をずらしているのかな。 そんな勘ぐりをしてしまうほど、この作品は快楽的・退廃的であり、良い子にはとても見せられない(笑) なんといってもオスカー・ワイルド原作ですもの。 オスカー・ワイルドには興味がありましたが、「ドリアン・グレイの肖像」という小説を話には聞いていても、実際に読んだことはありませんでした。 耽美主義のワイルドにロマンチックな憧れを感じていましたが、この映画をみて、その悪魔的な影響力の危険さをはじめて意識しました。 このお話は、美しい青年ドリアンが、自分の肖像画に描かれた若さが永遠に続くことを願い、自分が若さを保つかわりに、肖像画のほうが年老いていくこと、そのためには魂を失うこともいとわない、と願いをかけてしまったことからおこる、悪魔的な出来事を描いています。 白黒映画とはいえ、その調度品の豪華さには目をみはるものがあります。 そして1885年のロンドンの様子をとても忠実に再現しているようにみえます。 美しいドリアンの肖像画と醜く年老いてしまった肖像画をみせるシーンだけに、ビビッドなカラーが使われているので、そのインパクトもより激しい。 特に醜悪な姿が描かれている絵はまるで現代美術かと思われるほどの、おそるべき衝撃を感じます。 ドリアンを背徳的快楽の世界に導くヘンリー卿はさながらオスカー・ワイルドその人のよう。 ドリアンが犯した罪の数々は、恋人や友人などを死に追いやってしまったいくつかの事件以外はこの映画でははっきりした描写がありませんが、ワイルドが男色家であり、投獄された事実を考えると、これはホモセクシャル疑惑を考えた方がよさそうです。 現代の感覚では、ゲイであるくらいでそこまで咎められなくてもいいだろう、と思えるのですが、これが例えば幼い少年少女に対する性行為であるとか、そういう風に置き換えてみると、「芸術のための芸術」を信条とした耽美主義にも、悪とは一線をわかつ良心が必要なのだということが強く感じられます。 古い映画だとはじめは軽い気持ちで鑑賞しましたが、なかなかどうして重厚な作品。 これを新作の方では現代の感覚でベン・バーンズとコリン・ファースがどう調理してくれるのだろうとますます興味がわきました。 おまけ。 ドリアンのひどい仕打ちで自殺においやられる若い娘、シビル役のアンジェラ・ランズベリー。 どこかで見た顔だと思ったら、「ジェシカおばさんの事件簿」のジェシカおばさん、その人でした! 現在85歳の彼女がハタチの時の作品で、この時ゴールデングローブの助演女優賞を受賞しています。

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