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劇場版ポケットモンスター/結晶塔の帝王 エンテイ

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4.0

ネタバレこの映画の主人公は『Me』

自分は、ポケモンブームど真ん中ストライク世代で、 ゲームもやり込み尽くして、アニメも毎週観ていましたし、 映画版も、5作目までは観ていました。 初期のポケモン映画は、現在の映画版と違って、 テーマが若干重いです。これは、映画版3作目まで 脚本を務めた、首藤剛志さんの作風に因る所が大きいと思います。 この映画を、最初に映画館で観て、ゾクっとしたのは、 少女ミーを中心に、スノードン邸、グリーンフィールドの 草花や建物が結晶化していく描写です。美しい。 結晶化後の造形も素晴らしく、今観ても、 この映画の映像美術には、ゾクリとさせられます。 結晶を、そのまま音楽にした様なBGMも良いです。 さて、この映画の主人公は、サトシではありません。 この映画は、両親を失った孤独な少女、ミーを主軸に 展開していき、ミーの心象が変わるごとに、それがそのまま 映画の内容に反映されていきます。自分の世界を作り、 自分の世界に閉じこもるミー。結晶化などという特殊な能力が 無くても、自分の世界に閉じこもる子供は、現実にも多く 居るのではないでしょうか。だから、少女の名前は『Me』なのです。 わたしはあなたであり、あなたはわたしである、と。 この映画を観た子供が(当時の自分も含めて)、このメッセージに どこまで気付くのかわかりませんが、『子供向け映画』として この映画が作られている以上、このメッセージは、 非常に重要な意味を持ってくるのではないでしょうか。少なくとも、 心に多少なりとも屈託を抱えた子供には、何かが残ったのでは。 …当時の自分も含めて。 終盤のサトシ&リザードン対エンテイの戦いは、 そのまま、ミーの心の葛藤に置き換える事が出来ると思います。 この戦いは、サトシの戦いではなく、ミーの戦いなのです。 「このままじゃ、ミーはずっとひとりぼっちなんだ」 サトシは叫びます。外の世界に出なくては、という想い。 聞く耳を持たないエンテイ。ずっとこのままがいい、という想い。 二つの想いが葛藤します。 最終的に、ミーは外に出る事を選びます。 正しいか間違いかではなく、ミーが望む事を実現してきたエンテイ。 それは正しい父親の姿では無かったかもしれないけれど、それでも 最終的には、アンノーンの暴走を止め、ミーを外の世界に送り出した エンテイは、ミーにとって、最高の理想の父親像であり、永遠に、 彼女の夢の中で在り続けるのだと思います。 お子様ランチになってしまった、現在のポケモン映画では、 もう、こういうテーマは観れないかもしれないですね。 高校時代、すべてが真っ黒だった時代に、ミーの結晶化の能力を 羨ましく思いました。彼女は自分であり、自分は彼女でした。 自分が観たポケモン映画の中では、一番のお気に入りです。

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