4.0点
冒頭から、不安になる。 千尋と両親の微妙な距離感。 両親は千尋の手を握らない。 千尋は両親の腕にしがみつく。 両親から千尋への態度は、何処か冷淡。 だが邪険にしているでもない。 千尋は、10歳。 親にとっては、手が掛からなくなった年頃。 かと言って、完全には手放しにはできない。 例えるなら、 昼間に一人で留守番をさせても大丈夫だが、 一晩独りにさせるのはまだ無理。 1から10まで世話していた頃から、 ようやく1から5くらいまでで済むようになった。 “子供の為”と、何かと我慢していた不自由さから開放され、 そしてもっと千尋に成長を促し、もっと自由を取り戻したい・・・親。。。 千尋は、まだ10歳。 1から10まで親に面倒をみてもらうのをウザイと思い始める頃。 かといって、完全に放任されると不安になる。 もう手を握ってくれない親に対し、握られると嫌がり、手を離されると甘えたくなる。 川を渡れず、涙声で「待って」とすがる千尋を、チラッと振り返っただけで、 すたすたと先へ歩いてゆく両親。 『それくらい、頑張れば渡れるでしょ。何時までも甘えてないで、自力で乗り越えなさい』 と、無言で千尋に言い聞かせている様だ。 しかし千尋にとっては、確かに渡れるけど・・・ そうじゃない。 “このまま見捨てられるかもしれない”と不安を感じているのだ。 だから、手を引いて欲しい。。。 それも“甘え”と言うなら、せめて、渡りきるまで側で見守って欲しいのだ。。。 両親は別に千尋を邪険にしているのではない。 ただ、気付かないだけなのだ。 子供が親に対して確保する距離感、その複雑な気持ちを。 千尋は、両親が思っている程、“まだ大人ではない”って事を。 冒頭に感じた不安・・・それは上記の事だ。。。この“危うさ” そして、これがこの作品のテーマだと思う。 この微妙な年頃で両親と千尋の想いが誤解したまますれ違えば、ボタンの掛け違いの如く、 どんどん悪い方向へと双方の心が乖離してしまう。 だから、この作品が言いたかったことは、 “親はちゃんと子供のそばに居て、成長を見守ってあげて下さい” なんだと思う。 ラスト、両親の記憶はない。 千尋が両親を救おうと、どれだけ必死で頑張ったのかを、知らない。 ほんの少し大人になった・・・事を両親が気付いて欲しいと、願う。 千尋の身長は、ほんの少し伸びたのだ・・・ そして千尋の髪を結わいたゴムが変わっている事を、気付いて欲しい。 そのゴムがキラリと光った事に気付いて欲しい・・・ 何故なら千尋には、その光は見えてないのだから。。。