赤い糸
- nirdesukedo さん
- 2016年2月5日 19時04分
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戦場に運ばれていく列車の中で、元羊飼いの青年が見初めた女性と奇妙なそして深い愛に包まれていくという運命が待っているとはこの時は考えもしなかっただろう。
しかし、運命の赤い糸は強く太く徐々に彼らの運命を結びつけていく。
スターリングラード、そこはナチスとソビエトがせめぎ合う最前線の街だった。
2人に一丁の銃を持たせられ、突撃させられるソビエト軍兵士。しかしドイツ軍の猛攻に会い退却を始めると味方に背後から撃たれるという悲惨な戦場だった。
中国軍もそうだが共産軍というのは戦意を失った味方を背後から撃つという暴挙を行ったというのは有名な話。そこには一人の人間を単なるモノとしか見ない人命軽視の考えがある。
他にもこの映画では、共産主義の矛盾などを情報将校ダニロフに語らせるという場面もあり、資本主義国家の共産主義国家への視点が垣間見えて面白い。
そんな過酷な戦場で、元羊飼いの青年ヴァシリは狙撃という意外な才能を発揮し、それをうまく利用しようとする情報将校ダニロフと友人になる。
そしてそれをプロバガンダとして戦意を高揚しようとするのである。
映画はそんな狙撃兵としてのヴァシリとドイツ軍の狙撃将校との対決を中心進んでいく。
息詰まる狙撃対決は見ていて飽きさせない。
そんな中、列車の中で会ったターニャとの再会があり、彼女は無学だけれどもひたむきな純粋さを持ち合わせるヴァシリに惹かれていく。
しかし、ダニロフもまた彼女を好きであり、過酷な戦場で恋の三角関係が発生するという展開になっていくのである。
映画はこの辺から、狙撃兵の戦いを縦糸として、三角関係を横糸にする複雑な模様を呈してくる。
またターニャの弟サーシャがドイツ人将校と通じており、敵なのか味方なのか最後までわからないというのも面白い設定。
真夜中に兵舎に忍び込み、ヴァシリと体を合わせるターニャ。明日をも知れない戦場で、ただ一時の情熱に身を任せる二人、この辺の感情はよく分かる。
そしてその夜の寝不足が次の日の居眠りとなり、相手を倒す機会を失ってしまう。
そしてそれは大切な弟サーシャを失う原因ともなってくるのである。
最後まで飽きさせないでぐいぐいと引っ張っていく骨太の脚本は秀逸。
ただし、最後に死んだはずのターニャが生きているというのはちょっとご都合主義なのではなかろうか。なので減点1で☆4つとします。
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