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嘆きの天使 (1930)

DER BLAUE ENGEL

監督
ジョセフ・フォン・スタンバーグ
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3.92 / 評価:36件

嘆きの天使

  • bar***** さん
  • 2019年1月21日 14時06分
  • 閲覧数 315
  • 役立ち度 0
    • 総合評価
    • ★★★★★

嘆きの天使。私はディートリッヒもスタンバーグもほとんど知りませんでした。

しかしこの映画を見て、素晴らしい女優と監督だと思いました……。

ですけど、この映画はディートリッヒではなく、ヤニングスの映画だと思います。彼も素晴らしい俳優です。なのにディートリッヒばかり取り上げられるのは、やはり彼女のような女優のインパクトが凄かったからでしょう。

私は映画史に詳しいわけではありません。ディートリッヒがなぜあそこまで熱狂的にもてはやされたのかは、前後の文脈と照合しながらでなければ理解は困難だと思います。

ディートリッヒの特徴として、細い眉、美しい脚、美しい歌声などが挙げられますが、そういったこともそうですが、彼女の演技は自然なんですね。元からローラのような性格の女だったかのような気がしてくる。台詞だけでない、細かな所作や表情から、美しいけれどスレてしまった、キャバレーの歌手という人物像が分かりやすく浮かび上がってくる。

でもローラのキャラクターって少しご都合主義のような気がするんです。

どちらかといえば、実直で子供らしいラート教授の堕落がメインのテーマであり、そのために設えられた魔性の女(といってもローラはただ自然に振る舞っているだけで、特に悪徳の権化のような象徴的描き方がなされていたわけではない)という、ラート教授の変化のために作られた独立していないキャラクターのように思われたのです。

ですから、ローラがラート教授のプロポーズを受けた理由から、その最後まで、奇妙に彼女の心理性や性格が明確になっていない。ラート教授の精神性はこれでもかというほど描写されるのですが、ローラの考えていることは謎のままなのです。

謎は謎でも、それがそのまま魅力になっているということではなくて、物語の進行においてしっくり来ない部分があるということなのです。ローラはテーマ表現において重要な存在であるにもかかわらず、ラート教授のような人間くささが欠けているのです。

それが私が「この映画はヤニングスの映画だ」と述べた理由です。

これが私がこの映画に感じている不満です。しかしそれ以外はおおむね他の映画にはない魅力がある、特別な映画だと感じています。

まずストーリーが素晴らしいですね。謹厳実直なラート教授、彼は名誉ある地位に就いているものの、どこか幸せそうではない、やがて生徒達の不品行を追っていくうち、キャバレー「嘆きの天使」に辿り着いて、美しい歌手ローラと出会う。話していくうちすっかりローラにメロメロになってしまい、ナイト気取りの果てにプロポーズまでしてしまい、教授の仕事をクビになる。

ローラと結婚直後は幸せの絶頂にいるが、その直後ヒモ生活に。すっかり惨めになった生活に彼のプライドや理解力はついていけず、ローラという存在にのみ依存するようになっていくうち、彼の心は壊れていく。

やがて故郷の「嘆きの天使」に興行で戻ることになったラートは、座長から急き立てられるままピエロの姿で舞台に立ち、直後若い男と口づけを交わしているローラを見てしまい、緊張と絶望から、発狂してしまう。

ヤニングスの演技はすさまじい、ここがこの映画のクライマックスだと思います。

以後は廃人のようになったラートは雪の降る中、元の学校へ辿り着き、自分の教壇に突っ伏して死んでしまう。


見事に男の幸福と堕落を描ききったわけです。短い映画の時間内でここまで綿密に描くことが出来る人はそうそういないと思います。しかもバランスが良い。記述すると物語中の変化が多すぎるくらいに思えるのですが、見ているうちはまったくそんな気がしない。中編くらいのストーリーをしっかりと無駄なく描く技術がこのスタンバーグ監督にはあります。

ディートリッヒの脚の美しさ、歌声の美しさ、そして完全なる演技も注目すべきです。

これはまさしく名作だと思います。

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