ここから本文です

チャップリンのニューヨークの王様 (1957)

A KING IN NEW YORK

監督
チャールズ・チャップリン
  • みたいムービー 8
  • みたログ 178

3.93 / 評価:41件

チャップリンには未来も見えたのか。

  • pin***** さん
  • 2013年1月1日 9時42分
  • 閲覧数 704
  • 役立ち度 8
    • 総合評価
    • ★★★★★

新年の最初はいつもニコニコ大会。

今年はチャップリンで映画生活を始めることにしました。

本作、チャップリン晩年の作品。
あまり評価も高くないですし、『ライム・ライト』が初見では意外にも響いてこなかったものですから、本作も今まで敬遠していました。

多くの方の辛目の評価ではありますが…何と傑作ではないですか。
マッカーシー旋風、いわゆるレッドパージでアメリカを追放されたチャップリンのうっぷん晴らしのように見えますが、どうしてどうして、時代を超えた普遍的な社会批評となっています。

本作、革命で国を追われた王様が、アメリカの商業主義とレッドパージに翻弄される姿をコメディとして描いています。

正直なところ、前半の商業主義批判はさして面白いとは思いませんでした。
やはり、チャップリンも晩年はエネルギーが枯渇してしまったのかなと、心配になってきたほどです。
それでも、整形手術をした国王が、舞台のギャグを見て笑うに笑えないというシーンがあるのですが、かつてのチャップリンの十八番のギャグを、ほかの役者が演じる、それを見ても笑うことのできない国王(チャップリン)…なにか自由な表現を封じられているかのようであり、また、かつての体を張った天真爛漫なギャグとの決別のようにも思えて、『ライムライト』以上に哀愁を感じました。
ギャグの部分は、やはり普遍的なんでしょうね。
チャップリンが演じていなくても十分楽しめました。

しかし、何と言っても面白くなるのは後半。
小学校の表敬訪問でアナーキストの少年と出会ったあたりから、テンポもよくなり笑いと感動の波が押し寄せてきます。

アナーキスト少年との議論と悪ガキのいたずら(『街の灯』を思い出させます)に辟易する国王の姿や、非米活動調査委員会の査問に出席するためにドタバタと走り回る場面は、今日でも十分楽しめます。

査問への召喚令状を受け取ってしまうシーンは『インディ・ジョーンズ:最後の聖戦』のヒットラーのサインの場面を思い出させました。
しかも『インディ・ジョーンズ…』以上にお洒落でシャープでした。

アナーキストの少年との絆は政治的な姿勢というよりも、常に弱いものに共感していたチャップリンの究極の姿のようにも見えました。


それにしても、チャップリンにはどうしてこんなにも時代が見えていたのでしょうか。
いや、その時代だけではなく、未来をも見通していたとしか思えません。
チャップリン演じる国王は「いつかこんな時代は終わる。」と言ってアメリカを去りますが、残念ながら、アメリカの時代は一巡りし、悪名高い愛国者法を成立させ、あの時代の再来以上の暗黒を生み出してしまいました。

『独裁者』のナチス批判と『ニューヨークの王様』のアメリカ批判は違うと感じる人もいるかもしれませんが、底辺に流れるものは同じだと思います。
弱者や自由を蹂躙するものへの憎しみとでもいうべきものでしょうか。

最近話題になったSF『アイアン・スカイ』では月面ナチの主張にアメリカ保守派大統領が共鳴する場面があるそうです(残念・未見)が、それもうべなるかなではありませんか。
チャップリンはそれをも見抜いて、本作でアメリカ社会批評をしたのでしょう。

今日の世界情勢の恐ろしさは当時以上のものがあるように思います。
日本もすでにそうした世界戦略の波に飲み込まれてしまっています。
ネットで自由な発言をしていると思っている人の多くが、実はそうした言論戦略の罠にはまっていはしないでしょうか。
最近の隣国批判の多くが、実は戦略的に作られたもののような気がしてならないのです。


でも、でも、チャップリン、『殺人狂時代』でもアメリカを象徴する下品な夫人を殺すことができず、本作でもアメリカを代表するコマーシャル女優に「大好きだ」なんて言っちゃっています。
そのアンビバレンツなところがまた、僕たちの心をひきつけるんですよね。


どーもどーも2010さんの2012年最後のレビューが本作だったようですね。
僕は本作が2013年最初のレビューとなりました。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

  • 泣ける
  • 笑える
  • 楽しい
  • 恐怖
  • 勇敢
  • 知的
  • 切ない
  • コミカル
このレビューは役に立ちましたか?
利用規約に違反している投稿を見つけたら、次のボタンから報告できます。 違反報告
本文はここま>
でです このページの先頭へ