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野いちご (1957)

SMULTRON-STALLET/WILD STRAWBERRIES

監督
イングマール・ベルイマン
  • みたいムービー 69
  • みたログ 459

3.83 / 評価:163件

野いちごと聖化

  • bar***** さん
  • 2017年3月12日 18時40分
  • 閲覧数 716
  • 役立ち度 1
    • 総合評価
    • ★★★★★

イングマール・ベルイマン監督の作品、これが初鑑賞でしたが、美しい作品です。

さりげないカメラワークが素敵すぎます。表現も深みがあって、印象的です。
夢のシーンと現実のシーン、これらがはっきり別れているのって、実は見たことがありません。だいたいは幻想と現実が区別のつかないものになっていて、鑑賞者によって意見が違う、なんてことがほとんどです。でもこの作品は違います。

おそらく感傷的な表現をやや求めたからでしょう。現実に立脚しながら、夢想することによって、二つの地点の「ズレ」が生じ、それが感傷を生んでいる。
ですがそれが主眼ではなく、人間性の再興がテーマになっているんですよね。感傷というと扱いづらい素材ですが、この作品の主役が老人ということで、ただ香りの良さだけがあって、安心です。

まずは死の夢、そして初恋の夢(野いちごは彼とサーラを繋ぐもの?)、自身の罪と罰の夢、そして自分の原初の夢――。

現実では、自らの名声と死の気配に包まれている中で、息子の嫁の嘆きや、ケンカしている夫婦、若々しさあふれる三人組(自分・サーラ・ジークフリッドの分身?)、老いた母、息子夫婦の秘密など、いくつかの出来事や人間との出会いが、とても象徴的に展開されていきます。

そして主人公のイサークは、じょじょに変わっていくんですね。冷たい男だと妻や息子の嫁から言われてた彼が、自分のしてきたことをよく思い出して(その背後に自分の死の幻想があるわけですが)、罪と罰の意識にひたるのです。そしてやがて、罪の意識から解放され、穏やかな夢を見られるようになります。それがラストシーンの、「もう野いちごはないのよ(初恋の記憶が純化する)」「父と母が見つからない(原初の自分にたどり着きたい)」、そしてサーラに案内された先で、穏やかな姿の両親を見て、ふかい感慨に浸ることができるのです。

すばらしい物語、すばらしい表現性です。
控えめな演出がまたいいんです。これだけ美しいテーマなのに荘厳な感じはしないんですね。これは好みですけど、こういう清流の水のようなすっきりとした映画があってもいいな、と思いました。

また彼の他の作品も見ようと思っています。

詳細評価

物語
配役
演出
映像
音楽

イメージワード

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  • 知的
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