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バード★シット
2010年7月3日公開

バード★シット

BREWSTER McCLOUD

1042010年7月3日公開

hin********

2.0

ネタバレ分相応に

本作において特徴的なものはなんと言ってもその映像であろう。あれほどカメラを動かす映画は他に見たことがなく、監督の度胸には脱帽である。 映像が特徴的な監督なのだなと理解してしまえばダイナミックなカメラワークなど気にはならないが、ひとつだけどうしても許せないシーンがある。ブルースターが女性と雨の中を車で走るシーンがある。それぞれの顔のアップの行き来がこのシークエンスでは使われているが、その車のワイパーの動きの速度が明らかに一致していないのである。しかし、ロバート・アルトマンほどの人物がそんなミスを犯すとは到底思えない。だとすると意図的に速度を違えたのだろうか。ではなんのために。もしこれをニューシネマの要素の一つだと言うなら、それは映画をバカにしている。映画の一つ一つのシーンには意味が必要だ。優れた作品にはラストに向かって物語を転がすために必要なシーンがぎっしり詰まっており、無駄なシーンなどはほとんどない。そして我々はそれを知っているから、一つ一つのシーンが意味するところを必死で考えるのである。ワイパーのシーンでは筆者も何か意味があるのではないかと考えた。しかし、何もない。完全に肩透かしをくらった。つまりそのシーンで監督の意図ではないにせよ、我々は監督に裏切られ、その印象がどこまでも強く残り、作品全体への評価に影響してしまうのである。 映画的技法に関しては不信感を感じるところも以上のようにあったが、物語やテーマとしては1970年の作品にもかかわらずむしろ新しく感じられ、彼の発想力には驚かされた。冒頭辺りは色々な人が何の説明もなしに登場してくるのでストレスが溜まるが、そこを乗り越えてしまえば非常に簡潔な構成になっており、見る側の我慢強さも問われている作品だと言えるだろう。 本作は"風刺"が謳い文句の作品だが、ラストは苦笑が漏れるほど辛らつな皮肉であった。ブルースターはドームでついに自力飛行を成功させるが、やがて力尽き、地面に落ちてしまう。その地面に落ちる瞬間の彼はまさに"鳥の糞"のメタファーなのである。そして彼が死んだ後、パレードが始まり、映画に登場した人たちの紹介が始まるが、そのときの彼に注がれる視線はひどく冷たく、筆者は彼に同情を覚えると同時に人間はこれほどにも他者に対して冷淡になれるのか、と恐怖すら感じた。しかし、結局人間は地上で暮らしてきた長い歴史があり、その運命に逆らおうとすれば必ず返り討ちに遭うという、まさに"出る杭は打たれる"ことを監督は言いたかったのであり、自分の立場をわきまえず、分不相応に生きようとする者は"鳥の糞"同然だ、という恐ろしくも悲しいメッセージでこの映画を締めているのである。

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