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八月の鯨 (1987)

THE WHALES OF AUGUST

監督
リンゼイ・アンダーソン
  • みたいムービー 135
  • みたログ 443

4.05 / 評価:151件

観るのが早すぎた名作

  • koj***** さん
  • 2015年7月29日 23時05分
  • 閲覧数 2644
  • 役立ち度 1
    • 総合評価
    • ★★★★★

この映画の名前を知っていたのは、東京にある”映画好き御用達(らしい)”バーの名前が「八月の鯨」だったから(行ったことないけど)。
公開当時かの淀川長治氏が絶賛し、異例のロングラン・ヒットを飛ばしたという伝説は聞いていた。
自分が生まれる前の作品・監督知らない・出演陣もよく知らない(=出演作を観たことがない)老人ばかり…という要素から今まで手を出して来なかったが、今回せっかく映画館で観られる機会に恵まれたのだから、と午前十時の映画祭で初鑑賞に至る。

出演者の中で唯一、『八月の鯨』以外の出演作を見たことがあったのが、優しい妹・セーラを演じた伝説的大女優、リリアン・ギッシュ。
大学の授業でサイレント期の大作『國民の創生』の”一部分”を見たのが初だったが、彼女の可憐な美しさは際立っていた。
次が『狩人の夜』。これは全編通してちゃんと見たけれど、後半に出てくる”銃を持った強くて頼れる老婦人”が、あの”可憐で儚げな美少女”と重ならなくて多少困惑したのを覚えている(笑)

しかし『國民の創生』の可憐な役と、『狩人の夜』の老婦人役を両方見ていたことで、今回のセーラ役は違和感なく入り込めた。
セーラは正に、”可憐な老婦人”だったからである。

『狩人の夜』から30年以上経っているというのに、その頃から変わってないのでは? と思えるほどの若々しさに驚く。
動作は老人らしくゆっくりしているが、姉から「いっつも何かしてるのね」と皮肉られるほど常に動き回っている。掃除をして、姉の食事を用意して、庭で花の水遣りをして、バザーの出し物を作って、海の絵を描く。
訪ねてきた友人たちにもにこやかに愛想よく接するセーラは生き生きと輝いていて、正に”生きている人”そのものだ。

対して、盲目の姉・リビーは殆どが椅子に座っているシーンで占められ、訪問客や妹に高圧的に接している。
セーラが”生”を体現しているなら、リビーは”死”の体現者であり、事実「11月頃に私は死ぬだろう」というセリフも口にする。

この対照的だが、強い絆で結ばれている姉妹関係を軸に物語は展開する。
「家族(血縁)の絆」というテーマはどうも私は苦手なのだが、やたら”愛”を連呼したがる昨今の映画のように、ベッタベタに押してこないところが品があって良い。これが、”伝説的スターしか出ていない伝説的作品”の格の違いというものなのだろうか? 

正直、鑑賞後の感想は「観るのが40年ほど早すぎた…」。
「つまらない」、というのではなくて「今の私の年ではまだ理解できない映画だ」と直感した。
亡夫との思い出をとても大事にしている姉妹。かつての華やかなりし宮廷生活を懐かしむロシアの亡命貴族。セーラに古い家を引き払わせようと考えている幼馴染。時代と共に変わる島の住民に不満を漏らす大工。
みんながみんな、思い出=過去ばかりを語り、「昔は良かったよなあ」と懐古趣味に浸っているように見えて、そこが心に響かなかった。

ラスト、それでも残り少ない前を向いて”今”を共に生きて行こうとする姉妹の姿に救われたが、あまりにも”過去”の部分が多すぎて、少し鬱々とした気持ちになったのだ。
この作品を真に楽しめるようになるためには、きっとこれから多くの人生経験を積まなければならないのだろう。その頃に再見したい映画である。

詳細評価

物語
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音楽

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