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果てなき船路

果てなき船路

THE LONG VOYAGE HOME

105

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5.0

遠近法とジョン・ウェインの大きさ

1940年。ジョン・フォード監督。イギリス商船の乗組員たちは故郷に帰るのを心待ちにしているが、帰るたびに酒におぼれて船に戻ってきている。第二次大戦が始まり、船はアメリカから爆薬を積んでイギリスに帰るが、、、という話。自ら好んで、または好むと好まざるとにかかわらず「陸でなく海」で生きる男たち(トーマス・ミッチェルら)が、青年(ジョン・ウェイン)だけは「陸」に返そうと奮闘する。 例によってアイルランドの男たちの団結を描いていますが、全体的に陰鬱としているのは「海」に留められている男たちが、船でも街路でも遠近法的に奥行きを強調した画面のなかで描かれるからでしょう。斜め奥の消失点に向かっていく画面構成のなかの男たちにはそこから逃れる術がない。遠近法にとらわれた「海」の男たち。対照的に、唯一「陸」に残ることができたジョン・ウェインはしきりに体の大きさに言及されていた。しかし彼の喜びが画面に現れることはなく、ラストもまた「海」に戻ってしまうほかの男たちの会話で終わっています。 相手がだれでもお構いなくダンスもけんかもしてしまう「海」の男たちはある意味では地縁血縁や因果関係を離れてその場の勢いで自由に生きているのですが、同時に根無し草の悲しみも背負っている。そういう「自由」の両義性の映画でもありました。

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