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花のようなエレ

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4.0

ネタバレ風景の中の人々

 ベベ、カトリーヌ・ドヌーヴ、ジェーン・フォンダなどなど、数々の美女たちと恋仲になり、日本では映像作品よりも派手すぎる私生活の方が有名な気がするロジェ・ヴァディム監督(亡くなったときも作品の事にはあんまり触れられてなかったような…)。彼が南フランスで過ごした少年期をモチーフに描いたのがこの『花のようなエレ』です。  聾唖の美少女との悲恋、という時点で正直微妙な気持ちにもなるんですが、戦争が落としていった影が南フランスの美しい風景の中に見え隠れし、胸を打たれるものがありました。  母親は若い恋人と遊び呆けてるし、兄は戦争で負った足と心の傷を抱えて毎日飲んだくれている。そんな中で主人公が、何も知らずに純粋であり世界の外側にいるようなエレに惹かれるのも良く分かります。しかし、彼女もまた、主人公が思うような天使ではないのです。戦争の、大人の残酷に彼女も無自覚のまま、とっくに蝕まれていました。現実に対面して半狂乱になり、大人になる主人公が悲しい。人生は残酷で容赦がない。だけど、それでも生きてゆかなければいけない。  ラスト、エレが天使の羽を両手に持ちながら泣きじゃくるシーンが強く心に残っています。何も知らずに無邪気だった彼女が、人を愛することを知って、同時に悲しみも知ってしまったんですね。  南フランスの、淡い美しい風景。あちこちに散らかる人の業や愚かさの中、二人のふれあいのみが、やはり淡く美しく際立っています。  エレを演じたグエン・ウェルズが痛々しくて魅力的です。もっと活躍してるのかと思いましたが、主だった活躍はこの作品一本のようですね。すごく綺麗なんだけど。

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