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薔薇のスタビスキー

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4.0

山田康雄の吹替えが良く似合う。

 実際に起こったスタヴィスキー事件を映画化したものである。1930年代のフランス政界を掻き乱しただけでなく、隣国スペインにも影響を与えた大疑獄・大詐欺事件だ。当時のファシスト勢力や人民戦線などに関心のある方なら事件の精細は御存知と思う。  この映画を観たのはまだ中高生の頃だった。当時の私は政治的背景を詳しくは知らなかったので、時系列を少々捻った順序で組み立てられた物語に新鮮味を感じ、ベルモント氏扮するスタビスキーの優雅で破滅的な生き方に憧れに近い感覚で感情移入した。(余談1)  日本語吹替えはルパン三世やクイント=イーストウッド氏の声で有名な山田康雄氏。私の主観だが、破滅型ヒーローの大詐欺師スタビスキーにピッタリだった。足下に火がついて危険な状況なのに、お洒落な背広の襟には常に瑞々しい薔薇を挿し、飄々とした軽いノリで大事業を語り、愛する女性には余裕の笑顔を見せ続ける。ついに破綻した時のベルモント氏の渋い表情と山田康雄氏の「オチャラケが消えた真面目バージョンのルパンの声」が非情に似合っていた。(余談2) (余談1)実際のスタビスキーは事件当時60はこえていただろうから、映画制作時40代のベルモント氏とは些かイメージが違う。 (余談2)原題は単に「スタヴィスキー」である。邦題で「薔薇の」を付けたのは、薔薇がスタビスキーのトレードマークだからであり、私は良いタイトルだと思う。事件の事を知らない人間にとっては、優雅な大詐欺師の栄光と破滅の物語だから、よく体を表している。  

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